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唐沢寿明、テレビ業界に抱く危機感「頑張らないと。ドラマなんてなくなっちゃう」

俳優業というのは、もともと地味なもの

――ワクワクする脚本は、貴重なものでしょうか。 唐沢:主人公が何を考えているか分からないから、見ているほうも考えなきゃいけない、頭を使わないといけない。最近、そういう作品ってなくなったじゃない。いわゆる連続ドラマというのもなくなった。本当の意味でのね。1話完結モノが多いでしょ。若い子は1.5倍速で見てるって聞くし。そうなると、行間も何もなくなってくる。とにかく、今回の場合は、自分はいろいろ表に出さずに人を操るから、そこから生まれる状況を見るドラマ。主人公が突出しているわけじゃなくて、埋もれてもいい。それは俳優をやっていたら普通のことなんだけど。最近は、俳優じゃなくて、芸能界が好きな人もいるからなぁ。 ――というと。 唐沢:芸能界が好きな人というのは、自分が前にきてしまうんです。それは俳優じゃなくて、芸能界が好きなの。俳優は自分が出ない時があっても文句は言わない。物語がそれでうまく進行していれば。芸能界が好きだと、物語が進行していようがいまいが、常に自分が頭ひとつ出たがる。このドラマには、そういう人はいないからうまくいきます。人間ドラマには大事なことなんです。俳優業ってのはもともと地味なものなんですよ。

作品を作る環境がシビアになっている

唐沢寿明――「SPA!」は“ホンネ”をテーマのひとつに掲げています。 唐沢:ホンネしかしゃべってない(笑)。今は制作費とか、作品を作る環境がシビアになっていると思います。作品クオリティや良いスタッフ、キャストを求めるとどうしても予算もかかるし。 ――役者として、そこはどうしていけばいいと。 唐沢:そこはどうしようもないけど。でも今回は本当にラッキーなことに、この共演者で井上さんの素晴らしい脚本で、スタッフも本当にいいんです。こんな環境って本当にありがたいと感じてるんですよ。たまたま見た作品で、タイトルは言えないけど、「おかしいんじゃない?」って思うこともあるから。本当はすべての作品が今回のようなベストでなければいけない、という危機感はあります。
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頑張らないと。ドラマなんてなくなっちゃう
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ケーブルテレビガイド誌の編集を経てフリーランスに。映画周辺のインタビュー取材を軸に、テレビドラマや芝居など、エンタメ系の記事を雑誌やWEBに執筆している。親類縁者で唯一の映画好きとして育った突然変異。X(旧Twitter):@mochi_fumi

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【作品情報】
連続ドラマW フィクサー Season1」は4月23日(日)より放送&配信中(全5話)
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