日本のカーテンは「サイズ選び」と「機能性重視」が失敗の原因
今、住宅系のYouTube界隈を騒がせている男がいる。動画チャンネル『ジュータクギャング』の押村知也だ。設計から建築、インテリアコーディネイトに至るまで住宅に関するすべてをこなす住宅のスペシャリスト「住空間クリエイター」である。歯に衣着せぬ彼の発言は、わかりやすくて痛快。『ジュータクギャング』は、更新のたびに一般視聴者の心をつかみまくっている。
住宅業界では「ウインドウ・トリートメント(窓の装飾演出)」とも呼ばれるカーテンだが、押村は「日本人のカーテン選びはほとんどまちがっている」と指摘する。部屋全体の印象を大きく変える部分にもかかわらず、「とにかく遮光やミラーカーテンなど機能を重視しすぎる」のだとか。住宅オンチの日本人たちに向けて、「住空間クリエイター」の押村知也が手ほどきする。
「カーテンはインテリアの重要ポイントなのですが、多くの場合、後回しにされます。もし家を建てるのであれば、床や壁、天井と同時に選ばないとダメ。インテリアの一部なので、照明やソファやラグ、テレビ台などとのバランスも考えるべきです。それなのにカーテンだけ、ホームセンターや量販店に行って単独で買ってくる、という人が多すぎます」
「日本でカーテンが軽視されている証拠」だと押村は続ける。壁面の大きなエリアを占める装飾を甘く考えてはいけない。
「本音を言えば、カーテンのプロフェッショナルやインテリアをちゃんとわかっている人に選んでもらってほしい。例えば、海外ではパープルとピンクを横につなげてみたり、上下にピンクと茶色を組み合わせてみたり、なぜそんなセンスのいいことができるのかといったら、みんなプロフェッショナルに任せているからです。住む人間が自分のセンスでやろうとしても、なかなか難しいのが現実です」
とはいえ、そこは「ジュータクギャング」の異名を持つ押村。通りいっぺんではない答えもほしいところだ。
「一般の人でも可能な工夫もあります。まず付け方は『正面付け』にしてください。正面付けは壁の上にレールを取り付ける方法で、やってはいけないのは、窓の枠の中にレールを入れること。窓枠の中にレールを入れてしまうとカーテンの最大の美しさである布のドレープが損なわれてしまうからです。さらに大切なのは長さ。人の腰の高さぐらいまでの腰窓であっても、窓の下部が床まである掃き出し窓であっても、長くすること。仮に腰窓のカーテンレールが窓上10㎝から付いていたとして、窓下は20~30㎝にはしたい。つまり、窓に対して長さは30~40㎝ほど大きくして、同様に幅も片側で7~10㎝程度大きなカーテンを選んで、ファブリックのドレ―プを活かしてください」
掃き出し窓の場合は、床に触れるギリギリが狙いどころだとか。
「カーテンのメーカーが採寸すると、たいてい床から2~3㎝ぐらいの隙間を空けてしまうのですが、これは寸足らずに見えてしまいます。思い切って床にベッタリか、1センチぐらいのところまで長さを近づけてください」
押村の手がける住宅では、床に余計に30㎝も垂らしてドレープを生みだすデザインのものもあるという。カーテンの長さは、思った以上に「長い」のだ。
大きなカーテンは床上ギリギリの長さを狙え
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(おしむらともや)スタイラス所属。20代で建築、都市計画、インテリア、暮らしについてカナダ、アメリカで学び、輸入住宅などを手掛けるも挫折、住宅とは何かを見失う。大手ハウスメーカーや大手デベロッパーにコンサルティングして感じた「業界の嘘」と「都合の良い慣習」に納得できず、悪しき慣習にまみれた日本の住宅づくりからの逸脱が始まり、住宅業界の異端児となり、1000棟以上の建築設計を手掛ける。2022年7月にYoutubeチャンネル『ジュータクギャング』を開設。近著『美しい家のつくりかた』
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『美しい家のつくりかた』 1000軒の家を建ててわかったこと |
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