更新日:2023年05月07日 10:00
エンタメ

刑事ドラマの話題作対決。『教場』vs『ラストマン』“ホントの見どころ”を徹底考察

海外ドラマファンもうならせる作品世界

ラストマン

「TBSテレビ」公式ホームページより引用

 片や『ラストマン』はやはり新しい刑事・警察ドラマで、共生をテーマの1つに取り込む一方、エンタテインメント性を重視している。  2021年にイタリアで大ヒットした『警察実習生ブランカのデコダージュ捜査』をリスペクトした作品に映る。海外ドラマファンや他局のドラマ制作者の多くがそう思うに違いない。  主人公が研ぎ澄まされた嗅覚や聴覚をフル活用して捜査に当たるところが同じだし、自分の指を「パチン」と鳴らし、その音によって、周囲の状況を知るのも一緒だ。  日本の刑事・警察ドラマも欧米並みに本格的に共生を描く時代になったわけである。そもそも捜査はチームプレイだから、共生をテーマにするのに適している。欧米の刑事・警察ドラマには障がいのある人などマイノリティがごく自然に加わっている。マイノリティが捜査陣にいない作品を探すほうが難しい。

日曜夜に向いたエンタメ性

 エンタメ性は第2話に鮮明に表れていた。キャバクラ嬢がベルトで絞殺され、その遺体にはローズの香水が付着していた。12年前、風俗店嬢が医師・青柳(浜田信也)によって殺害された事件と手口が一緒だった。  皆実のパートナーである警察庁の護道心太朗(大泉洋)は3カ月前に出所した医師の再犯だと読んだ。 「ローズの香水やベルトが凶器に使われたことは青柳と一部の捜査関係者しか知らないことです。模倣のしようがない」(護道)  こう言えるのはドラマだからである。相当、脚色してある。凶器の情報を検事と共有しないはずがない。法廷でも凶器を伏せるわけにはいかない。犯行立証の根幹なのだから。  皆実が交換研修生として来日したり、護道の甥の泉(永瀬廉)がキャリアでありながら、捜査1課で捜査に加わっていたりすることも含め、エンタメ性を強くすることで視聴者ターゲットを広くしているのだろう。  家族がそろいやすい日曜の夜に向いている。 <文/高堀冬彦>
放送コラムニスト/ジャーナリスト 1964年生まれ。スポーツニッポン新聞の文化部専門委員(放送記者クラブ)、「サンデー毎日」編集次長などを経て2019年に独立。放送批評誌「GALAC」前編集委員
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