更新日:2023年05月07日 10:00
エンタメ

刑事ドラマの話題作対決。『教場』vs『ラストマン』“ホントの見どころ”を徹底考察

新タイプの警察・刑事ドラマ

教場

フジテレビ公式ホームページより引用

 春ドラマが出揃った。プライム帯(午後7時~同11時)には16本ある。うち、警察・刑事ドラマは5本。曜日順に並べると、次の通りである。 ■『風間公親-教場0-』(フジテレビ、月曜午後9時) ■『育休刑事』(NHK、火曜午後10時) ■『特捜9 season6』(テレビ朝日、水曜午後9時) ■『ケイジとケンジ、時々ハンジ。』(テレビ朝日、木曜午後9時) ■『ラストマン-全盲の捜査官-』(TBSテレビ、日曜午後9時)  これまで国内にはなかった新しいタイプの作品は2つ。まず木村拓哉(50)扮する刑事指導官が新人刑事に事件を解決させるシリアスな倒叙ミステリー『教場-0-』。さらに福山雅治(54)が演じる全盲のFBI特別捜査官・皆実広見が、日本の捜査官たちとタッグを組むことで共生も訴える『ラストマン』である。  4月第4週の視聴率(24~30日、ビデオリサーチ調べ、関東地区)は以下のとおり。 『教場-0-』 個人5・7%、コア(13~49歳の個人視聴率)3・8%、世帯9・8% 『ラストマン』 個人7・8%、コア(13~49歳の個人視聴率)3・6%、世帯13・1% 『教場-0-』はこの1週間で個人が3位、世帯も3位、コアは1位。『ラストマン』が個人1位、コア2位、世帯は1位。どちらもよく観られている。  両作品の作風はまるで違うが、同じ刑事・警察ドラマで、木村と福山が長らくドラマ界を背負ってきた俳優だから、どうしても比較される。ただし、『教場-0-』のほうが作風が重たく、個人と世帯の視聴率で『ラストマン』の後塵を拝していることから、冷めた声が目立つようだ。アンチ木村の多さも影響しているのだろう。

刑事ドラマを観てない層も支持

 もっとも、『教場-0-』が清新で質の高い刑事・警察ドラマであるのは間違いない。それは、普段は刑事・警察ドラマをほとんど観ていない10代からの分厚い支持にも表れている。  4月10日放送の第1話と同17日放送の第2話のT層(13~19歳)の個人視聴率はそれぞれ4・2%と4・1%。その後も3%台で推移している。春ドラマのT層個人視聴率は多くが1%割れ、2%割れなのである。T層個人視聴率が4%を超えたドラマはほかにない。個人と世帯で独走する『ラストマン』ですら同30日放送の第2話のT層個人視聴率は1・8%だった。 『教場-0-』を10代など若い視聴者が支持するのは腑に落ちる。まず、木村の黄金期を知らず、熱烈なファンがいない分、アンチの存在も聞かない。また、この作品は旧来型の刑事・警察ドラマと違い、無駄な刑事同士の人間ドラマがない。  事件解決前に刑事たちが飲み屋やラーメン屋に行き、息を抜くような場面である。刑事指導官の風間による新人刑事の指導はあるものの、刑事部屋内の人間模様なども描かない。  刑事たちのアフタータイムを観るのが好きな視聴者もいるだろうが、事件には無関係。職場での人間関係かに実感が薄い10代やミステリーファンにとって、アフタータイムの場面は余計なのだろう。それより謎解きのヒントや犯人の心象風景を知りたいはずだ。
次のページ
“推理する楽しさ”を提供
1
2
3
放送コラムニスト/ジャーナリスト 1964年生まれ。スポーツニッポン新聞の文化部専門委員(放送記者クラブ)、「サンデー毎日」編集次長などを経て2019年に独立。放送批評誌「GALAC」前編集委員

記事一覧へ
おすすめ記事
ハッシュタグ