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アメリカと日本でこんなに違う子育て事情。自由だけどリスクも隣り合わせの「アメリカの小学校」で驚きの連続

ランチも服装も何でもアリ

サック・ランチ

アメリカでは弁当箱さえ不要。これぞアメリカの伝統、サンドイッチとフルーツが茶色い紙袋に入る「サック・ランチ」

 ランチも自由度が高い。弁当、給食、好きなほうを選べる。教室ではなくカフェテリアに移動して食べるのだが、用意ができた子から食べ始めて良いし、席も自由。有料の給食はピザやパスタなど複数から選べ、専用スタッフが用意するため給食当番もない。学校によっては朝食もある。弁当も日本のような凝ったものでなく、サンドイッチひとつでOK。なんならクラッカーとチーズ、フルーツのみで可。低学年までは午前中におやつの時間が設けられ、クッキーやマフィンなどを家から持参する。先生方にしても、スタバのコーヒーやドーナツを机に置いて授業をしていても誰も気にしない。学童スタッフだって、腕に脚に首にタトゥーだらけ!  子どもも私服登校で、基本的に何を着ようが構わない。プリンセスのドレスを着てきても良いし、耳にピアスを開けている子や髪をカラーリングしている子も大勢いる。そもそも、ハロウィンの仮装の日、パジャマの日、シャツ裏返しの日、スーパーヒーローのコスプレの日、ミスマッチコーデの日、応援するスポーツ・チームのユニフォームを着る日などが不定期にある。バックパックと呼ばれるリュック式のバッグを背負って通学するが、デザインはキャラクターものでも、ブランドものでも。色、素材もなんでもあり。まったくの自由だ。日本のような「ラン活」とは無縁。正直、日本と違い、ルールがゆるくて自由なので親もかなり楽をさせてもらっている。

銃が合法の国で送る小学校生活は危険が隣り合わせ

防犯対策

アメリカの学校では必ず用意されている、いざというときの防犯対策「ロックダウン」の手順

 アメリカでは日本のように、子どもだけで小学校に通学させるということがない。塾やおけいこも同様。そもそも家で子どもが留守番しているだけで、虐待を疑われ警察を呼ばれてしまう。子どもを公園や友だちの家で遊ばせるにも、ひとりで行かせられない。子どもが中学に上がるまで、あるいは自分で車が運転できるようになるまで、送迎の負担は常に親にのしかかる。働く親にとっては、日本と違い高額な学童やシッター代も大きな悩みの種だ。  警視庁の「令和3年における行方不明者の状況」によると、日本での行方不明者は1日当たり200人以上だとか。一方、アメリカでは18歳未満だけで1日当たり2000人を超える。桁が違うのだ。親が見守りを徹底したくなる理由である。小学校の避難訓練は、火災などに備える防災訓練とともに、防犯訓練も行われている。アメリカでは「ロックダウン」と呼ばれ、学校周辺に不審者が目撃されたことを想定し、すべての門やドアを施錠、窓はカーテンやブラインドも閉め、電気を消し、子どもたちは教室に閉じこもる。また、安全が確認されるまで屋内退避を続ける「シェルターインプレイス」もある。  実際、わが子が通う小学校の近くの道路で銃が見つかった際、このシェルターインプレイスを行ったとのことだ。リアルに起こりうる危機なのだと実感する。ここは、毎年のように学校を標的にした銃乱射事件があり、多くの子どもたちが犠牲になっている国なのだ。  パンデミックの混乱からアメリカ都市部の治安の悪化が進む中、銃撃や暴行、放火などの犯罪、ドラッグのまん延が問題視されているホームレスのテント村の増加が、小学校付近の治安をおびやかす。わが子が通う小学校でも、校庭で注射針や落書きが確認されている。隣接する高速道路の高架下にはホームレスのテント村ができていたが、学校側と保護者たちの警察への働きかけで、つい最近撤去された。しかし、少し離れた場所に分散しただけで、問題が解決されたとは言えない。通学路沿いの落書きは、年々ひどくなっている。
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日本はルールに縛られている分、守られている
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アメリカ・シアトル在住。エディター歴20年以上。現地の日系タウン誌編集長職に10年以上。日米のメディアでライフスタイル、トレンド、アート、グルメ、カルチャー、旅、観光、歴史、バイリンガル育児、インタビュー、コミック/イラストエッセイなど、多数の記事を執筆・寄稿する傍ら、米企業ウェブサイトを中心に翻訳・コピーライティング業にも従事。世界100ヵ国以上の現地在住日本人ライターの組織「海外書き人クラブ」会員

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