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現役獣医師が見た「最悪な飼い主」の実態。初診なのに“愛犬の安楽死”を依頼されることも

初診で安楽死を提案してきた飼い主

動物病院「ペットは家族」という認識がなく、大切な命を“モノ扱い”している人が多くいる。以前、S氏の病院にやってきた飼い主は、今後の診察代の負担などを考えてなのか、初診で安楽死を依頼してきたという。 「初診で安楽死を提案してきた人がいて、そのときは本当に驚きました。まだ診てもいないのに『辛そうなので安楽死をさせてあげてください』と言われたんです。通院や入院しているワンちゃんなら、身体の状態を鑑みて、飼い主さんと相談を重ねたうえで安楽死を選ぶこともあります。安楽死は悩みに悩んだ末に出す苦しい決断であるはずなのに、初診で簡単に提案してくるなんて……。しかもパッとみた感じはそんなに苦しそうじゃなかったこともあって、ちょっと言葉を失いましたよね」

獣医師にとって安楽死は「辛い仕事」

 獣医師による安楽死は法律で認められているが、苦しんでいる動物を目の前にして、他に治療の選択肢がないときに苦肉の策として行うこと。動物病院に来るまでにどういったことがあったかは不明だが、初診でやってきた飼い主が提案することではない。ただ、飼い主からの提案に対して、安楽死を断るのも難しいことのようだ。 「飼い主さんからの安楽死の提案を断る理由も難しいので、初診での安楽死は破格の金額を設定しています。通常は1万5千円〜2万円なのですが、10倍くらいの金額にしていますね。そうなると『じゃあ他の病院に行きます』となるので、初診で安楽死の注射をしたことはないです。『あそこの動物病院は簡単に安楽死やってくれるわよ』って評判になっても嫌なんで……。動物が好きで獣医になったわけですから、基本的にはやりたくないですね。ただ私が断ったことで、その子の命を救えたわけではないので、その後どうなったかを考えると心苦しいです」  S氏は繰り返し「そんな人に飼われている犬猫が可哀想で……」と話した。  犬や猫を飼い始めるときは“最期まで面倒をみられるか”を真剣に考える必要がある。しかし高齢者が子犬・子猫から飼い始め、人間が先に亡くなり、行き場を失って動物愛護団体に保護される犬猫が後を絶たない。犬猫はモノではなく「命である」ということ、そして「飼い始めたなら最期まで面倒をみなければならない」ということが常識化していないことが、このような酷い飼い主が存在する要因のひとつなのではないだろうか。 文/セールス森田
Web編集者兼ライター。フリーライター・動画編集者を経て、現在は日刊SPA!編集・インタビュー記事の執筆を中心に活動中。全国各地の取材に出向くフットワークの軽さがセールスポイント
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