イギリスのコメディアン、ジャック・カレンは<人生のほとんどはジョークだ>と語り、その理由をこう指摘しています。
<コメディは社会におけるあらゆるイベントが不条理だと人々に思い知らせるためのものだ。兵士とは合法的な殺人者で、儲けは盗みと同じ。結婚は集団的“ごっこ”だ。人は一生をかけて自分がその中で死ぬためだけに家を買う。でもブリトニー・スピアーズかヒトラーでもないかぎり、100年後には誰も君のことなど覚えてはいない。>(『Why Being “The Funny Friend” Is Not All It’s Cracked Up To Be』 ファッションサイト『MR PORTER』 2022年9月15日 筆者訳)
世の中の大半がよしとしている価値観に揺さぶりをかける。時には汚い表現を用いてでも人々の意識にのぼらせること。これが笑いの役割だと言っているのですね。よく日本のお笑いは政治家や著名人を批判しないからダメだといった論説を目にしますが、そんなに単純なものではありません。
むしろ、ふつうの日常にこびりついた偽善をくつがえすことこそが権力への挑戦であり、笑いの根幹を成すのです。