更新日:2023年06月04日 19:04
仕事

会社に冷遇され適応障害、うつ病に…「女性になった社員」が労災認定を勝ち取るまで

面談場所はまさかのカラオケボックス…

児玉さんはとうとう2018年に「うつ病」と診断され、休職を余儀なくされた。その際、これまでのハラスメントを労災として認定してもらおうと決意。また、復職のために会社に求めたのは次の点だった。 「ハラスメントをしていた上司を異動してもらうように求めました。それができないならば、私を別の部署に異動させて欲しいと、譲歩した提案もしました」 しかし、会社はその提案に取り合わず門前払い。それでも繰り返し話し合いの場を求めると会社はようやくそれに応じたのだが……。 「面談をすることになったんですが、ハラスメントを行った上司がいる職場に来るように言われました。私は、上司がいるその工場に行くだけでも吐き気がしてしまうので、本社で面談してほしいとお願いしました。でも、拒否され続けたんです。結果的に呼び出された場所は、カラオケボックスでした。あまりにもぞんざいに扱われているなと思いましたね」

労働組合の協力で復職に成功

会社とたった一人で戦ってきた児玉さんだが、それでは埒があかないと、社会保険労務士や弁護士の力も借りたという。すると、3年もの間、譲歩の気配さえなかった会社から、あの上司のいない別の部署への復職の提案が上がってきた。しかし……。 「復職先は、元の職場から数百キロ離れた工場だったんです。辞めさせたいという意思を感じましたね。弁護士さんも『その提案を飲むのはマズイので、基本的に突っぱねるように話を進めましょう』と言ってくれたんです」 ただ、戦いが長引くと弁護士費用もかさみ生活を圧迫することになることから、断念せざるをえなかった。その頃に、知人を通して紹介されたのが、個人で加入できる労働組合「プレカリアートユニオン」だ。 児玉さんは同組合とともに戦い、​​2021年9月についに、転勤の必要もなく、ハラスメントを行っていた上司とは別の空間で業務ができる部署で復職することができた。さらに2022年6月には、労働基準監督署の労災認定も獲得することができた。 これまで我慢を強いられてきた人たちが、徐々にではあるが声を上げやすい世の中になってきている。とはいえ、いまだに差別意識は根強く残っているのも事実。少しでも多くの人が、その被害に遭わないように願ってやまない。 <取材・文/Mr.tsubaking>
Boogie the マッハモータースのドラマーとして、NHK「大!天才てれびくん」の主題歌を担当し、サエキけんぞうや野宮真貴らのバックバンドも務める。またBS朝日「世界の名画」をはじめ、放送作家としても活動し、Webサイト「世界の美術館」での美術コラムやニュースサイト「TABLO」での珍スポット連載を執筆。そのほか、旅行会社などで仏像解説も。
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【プレカリアートユニオン】 雇用が不安定な有期雇用・非正規雇用も、職場のつながりが希薄な若年正社員も、在職で労働条件向上に取り組もうと結成した労働組合 公式サイト Twitter:@precariatunion
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