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広島で「広島焼き」がタブー扱いされる理由を探る。「口にしたら生きては帰れない」

1980年代まではマイナーグルメだった

 いったいなぜ広島人は、そんなに「広島焼き」という呼称にキレるのか。まずは、このはた迷惑な「広島焼き」という呼称を誰がいつ生み出したかということである。  新聞・雑誌を丹念に調べたところ、この言葉が登場するのは1980年代前半からである。同時期には「広島風お好み焼き」という言葉も生まれている。  そもそも、それ以前には広島のお好み焼きを扱った記事というものが存在しない。現在でこそ広島のお好み焼きは全国的なグルメだが、1980年代までは広島人しか知らないマイナーなグルメだったのである。  そんな地方のマイナーな存在だったお好み焼きが県外へと進出する時に「広島焼き」「広島風お好み焼き」という二つの呼称が発生したようだ。  では、誰が広島人がキレる「広島焼き」という迷惑な呼称を生み出したのか。造語の主は判然としないが、いくつもの状況証拠が広島人自身が生み出した言葉であることを教えてくれる。

広島人が「広島焼き」と呼んでいた物産展

 例えば、『中日新聞』1991年10月4日付朝刊では、名古屋で開催された「全国有名駅弁・寿司とうまいもの大会」が報じられている。この記事には、こんな記述が。 ===== 「広島焼き」(広島)など、二十二種類の駅弁や特産品の実演販売コーナーも設けられ、にぎわった。 =====  これは、広島人自身が自分たちのお好み焼きを「広島焼き」と呼んでいた証拠ではなかろうか。さらに広島人自身がポジティブに「広島焼き」という言葉を用いている事例はないものか調べてみると……あった。
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21世紀になるまでは許容していた?
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