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AIに仕事が奪われる?画像生成系AIはイラストレーターやマンガ家を殺すのか

「学習」にまつわる著作権上の問題

サイバーパンク桃太郎

画像生成AIを使って描かれたSFコミック『サイバーパンク桃太郎』(新潮社)

 画像生成AIの実用化によって現在進行形で問題とされているのは、まずAIによって「学習」される画像素材の著作権的な扱いをどう位置付けるかという点だ。  現行の日本の著作権法においては「第三十条の四」の二項に「情報解析(多数の著作物その他の大量の情報から、当該情報を構成する言語、音、影像その他の要素に係る情報を抽出し、比較、分類その他の解析を行うことをいう。」という記述が2018年の著作権法改正によって導入されており、事実上「AIによる学習」のための素材としての画像データの利用は著作権侵害とは認められないのである。  また、現在ネットなどで見られる著作侵害にまつわる危惧の多くは、AIによる画像生成によって学習させたクリエイターの創作物にそっくりなものが出力されることだが、じつはAIが自動生成したテキストや画像は著作権法上は「著作物」ではない。  著作権法「第二条の一」に著作物の定義として「思想又は感情を創作的に表現したもの」という規定があるため、人間ではないAIが出力したテキストや画像は「思想又は感情」を「創作的に表現したもの」とは看做さない、という法解釈が一般的だからだ。  つまり、日本において学習素材としての画像は現行著作権法においては「著作権侵害」の要因とはなりえないのである。

「生成」されるイメージとライセンスの問題

 今後画像生成AIが著作権、知的財産権的な問題を生じるとしたら、むしろ生成の結果としての画像の利用に関する問題としてだろう。  すでにFantia、pixiv、Skebといったイラスト創作系コミュニティ、サービスがAIを利用した画像販売の規制をはじめているが、個人的にはAIを用いたオリジナル創作への規制自体は将来的にはアナログ創作と併存するかたちに発展していくいくだろうと考えている。 参考) Fantia 5月10日『AI作品の取り扱い一時停止について』 弁護士ドットコム 5月11日『画像生成AIの「悪用」に絵師たちが反発、pixiv上でイラスト非公開に…福井健策弁護士に聞く』 IT Media 3月2日『Skeb、AI画像検出AIを導入 取り締まり強化へ「AIはクリエイターを置換する技術ではない」』  AdobeのクリエイティブツールへのAIアシスタントの導入に象徴されるように、「著作物」としてのグラフィカルなイメージの構築自体は人間のイマジネーションが主導してなされるものであり、画像生成系AIの存在はそのサポートをするためのものだと考えるべきだ。 問題なのは、AIによって特定の企業や個人によってライセンス管理されているキャラクターデザインや世界観をそのまま流用したハイクオリティな画像イメージがかなり簡単に生成できてしまうことだろう。たとえば映画『スターウォーズ』などは、YouTubeなどですでにAIを利用した二次創作が相当量発表されている。  生成系AIを使用した『スターウォーズ』やマーベルヒーローなどの即マネタイズに直結するようなタイトルの二次創作の増加は、時間の問題でライセンス元によるなんらかの二次創作規制を導くのではないだろうか。
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過度な期待でも脅威論でもない
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フリーライター。著書『誰もが表現できる時代のクリエイターたち』、『戦争はいかに「マンガ」を変えるか:アメリカンコミックスの変貌』(NTT出版)、『キャラクターとは何か』(ちくま新書)共編著『アメリカンコミックス最前線』(大日本印刷)。東京工芸大学非常勤講師。明治大学米沢嘉博記念図書館スタッフ。

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