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2023年春ドラマ「コア視聴率」BEST10。最終回の評価でみえた“成功作の法則”とは

『ラストマン』はコア、個人全体の2冠

ラストマン

『ラストマン』番組公式HPより

 1位の『ラストマン』はコアと個人全体の2冠。40代以下の高い支持を集めつつ、50代以上にも広く見られたことになる。それも納得である。刑事ドラマとして分かりやすく痛快だった。それが終盤で家族の物語に変わった。全盲のFBI捜査官・皆実広見(福山雅治)と警察庁警部補・護道心太朗(大泉洋)が兄弟と分かり、2人の実父で無期懲役囚・鎌田國士(津田健次郎)が無実であることが明らかになった。最後まで魅せた。  2位の『王様に捧ぐ薬指』は橋本環奈(24)の初の主演連ドラ。橋本の若い世代からの人気の高さもコアの数字を引き上げた要因に違いない。まず橋本が演じる貧乏なウェディングプランナーが、勤務先の結婚式場の社長(山田涼介)と結婚する。実際には式場をPRするための偽装結婚だったが、やがて2人は好き合うようになる。そして本物の夫婦になる。  50代以上が観るのはいささかキツいストーリーだったと思われるが、自分の年齢と合わぬだけで批判するのは野暮。若い世代向けに特化した連ドラと考えると、義母(松島菜々子)が2人の仲を引き裂こうとするなど見せ場が多く、人気もうなずける。

一部で酷評された『教場0』は3位

 木村拓哉(50)が主演した3位の『教場0』は世帯視聴率が全11話で9・8%。2桁割れしたため、一部で酷評された。世帯視聴率の全話平均値は『ラストマン』、『特捜9』に次いで3位だったのだが、なぜか考慮されなかった。  踏まえておきたいのは『ラストマン』の最終回の世帯視聴率すら13・4%だったこと。この10年間でゴールデンタイム(午後7~同10時)の総世帯視聴率(HUT=その時間にテレビを観ている家の割合)は急減した。約65%から約50%になった。  理由は録画機器の浸透やテレビ離れなど。「世帯視聴率10%以上が合格点」などという尺度はとっくに消えている。過去のドラマの世帯視聴率と比較するのもほとんど無意味。視聴規模が大きく違っているのだから。第一、現在のドラマは個人視聴率で性別や年齢などを細かく調べた上で、つくられる時代になっているのだ。  振り返ると、『教場0』は青春ドラマという色合いも強かった。青春末期の日々を送る新米刑事・瓜原潤史(赤楚衛二) や遠野章宏(北村匠海)ら5人の夢や成長、挫折、そして死が描かれた。それもあって、コア視聴率が高かったが、それよりT層(13~19歳)の個人視聴率が良かった。毎週、トップクラスだった。
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コア視聴率4位、5位は若い世代を狙った作品
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放送コラムニスト/ジャーナリスト 1964年生まれ。スポーツニッポン新聞の文化部専門委員(放送記者クラブ)、「サンデー毎日」編集次長などを経て2019年に独立。放送批評誌「GALAC」前編集委員

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