仕事

TOTO『ウォシュレット』誕生当時の苦労。「おしりは拭くもの」という“常識”への戦い

あのキャッチコピーが起爆剤に

TOTO小倉工場

TOTO小倉工場のかつての外観

 ついに完成した『ウォシュレット』。現在ではあまりにも一般化し、温水洗浄便座全てをウォシュレットと呼ぶ人も多くいるほどの商品名だが、名前の由来をご存知だろうか。 「おしりを『拭く』から『洗う』に変える。どんどん洗おう!『レッツ・ウォッシュ』を逆さまにして、『ウォシュレット』と名付け、1980年2月に商標登録を出願しました」  発売当初は、口コミで知られていったという『ウォシュレット』。その認知が一気に広まった背景には、『おしりだって、洗ってほしい』という、ある年代以上にはお馴染みの、テレビCMのキャッチコピーが。浅妻氏は、CM制作の裏話を聞かせてくれた。 「コピーを担当した仲畑貴志氏に、当時の技術担当が商品の説明をしました。その時、手に青色の絵の具を付け『紙で拭いてみてください。取れませんよね。おしりだって同じです。水で洗えばきれいになります。これは常識への戦いなんです』と訴えたんです。それから4か月後、仲畑氏が役員にプレゼンしたコピーが『おしりだって、洗ってほしい』で、そのエピソードが、そのまま青い絵の具を使ったCMビジュアルにも繋がっています」

進化し続けるウォシュレット

 こうして『ウォシュレット』は同業他社と切磋琢磨しながらも、確固たる地位を保ち続けている。そこには、強いこだわりもあった。例えばノズルの角度。 「何度も繰り返し実験し、ノズルから出てお尻に当たったお湯がノズルにかからない角度として、43度を採用しています。これは1980年の発売当初から変わらないこだわりの角度です」  さらに、衛生面はとてもきになるところだが、発売以降、その点も進化を続けているという。 「セルフクリーニング機能を搭載したり、2011年には除菌作用のある水でノズルの内外を自動洗浄する機能を発売しました」  こうした進化の過程で、時代とともになくなった機能もある。 「2005年に発売した『サウンドリモコン』という機能です。トイレで好きな音楽が聴けるようにリモコンにSDカードを挿入し音楽が再生できるようにしたものでしたが、時代とともに音楽を携帯電話で聴くようになり、2012年に役目を終えました」  すでに完成されていて、性能は頭打ちのようにも思える温水洗浄便座。しかし取材の中で「これまでボツになった案」を尋ねると、「ボツになった案も踏まえて、今後、改良され商品化される可能性がありますので、回答を控えさせてください」との返答。2023年8月1日には「きれい除菌水」を利用した『便座裏きれい』も発売されるとのことで、私たちが考えもしないような、今後の進化に期待だ。 <取材・文/Mr.tsubaking>
Boogie the マッハモータースのドラマーとして、NHK「大!天才てれびくん」の主題歌を担当し、サエキけんぞうや野宮真貴らのバックバンドも務める。またBS朝日「世界の名画」をはじめ、放送作家としても活動し、Webサイト「世界の美術館」での美術コラムやニュースサイト「TABLO」での珍スポット連載を執筆。そのほか、旅行会社などで仏像解説も。
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