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ファミレスの定番「ドリンクバー」。90年代“導入当時の苦労と混乱”を探る

 何事にも始まりはある。そしてそこには、今では想像もつかない状況や苦労も。例えばドリンクバー。今では多くのファミリーレストランで採用され、多くの人が当たり前に使っているサービスだが、その誕生にはどんな裏側があったのか。ドリンクバーの発祥と言われる「ガスト」を運営する、すかいらーくホールディングスPR担当者に聞いた。

ドリンクバー発案のきっかけは

05ガスト小平店(1号店)

ドリンクバーを初めて導入したガスト小平店(1号店)

 私たちが当たり前のように利用しているファミリーレストランのドリンクバー。PR担当によれば、最初に導入されたのは、1992年3月にオープンした「ガスト1号店」だったという。創業当時は、お替わり自由のコーヒーサービスで、スタッフがテーブルまで持ってくるスタイルだったとのことだが、何をきっかけにドリンクバーの発案に至ったのか。 「スタッフがたまたま置いていたコーヒーポットから、お客さまご自身が注いでいるのに気づき、お好きなものをお好きなタイミングで、お好きなだけ飲めるサービスがあればお客さまにお喜びいただけるのではないかと、思いついたのがきっかけです」(PR担当、以下同)  ドリンクバーでもおなじみのコカ・コーラの誕生も、元となるシロップを通常ならば水で割って出すところ、うっかり水と炭酸水を間違えて作ってしまったところ、大好評となったことがきっかけとなっている。(コカ・コーラジャパンHPより)  イノベーションには、失敗や予想外の出来事がきっかけになることも多いが、ある種、利用者の横着をきっかけにそのニーズが見出されたドリンクバーも同様といえるのではないだろうか。

ドリンクバー黎明期の様子

 今では、誰もが気軽にドリンクのおかわりのために席を立ち利用しているが、黎明期にはどんな苦労があったのか。同氏は次のように話す。 「当初は、お客さまにとって初めてのサービスでしたので、まさか飲み放題で何度もお替わりすることができるとは思いもよらないサービスに驚くお客さまが多く、お替わりの仕方に戸惑うお客様もたくさんいらっしゃいました」  令和に生きる私たちは、好みの範囲で適度にドリンクバーのサービスを享受している。しかし開始当時は「繰り返しお替わりして、全種類を楽しもうとされるお客さまの数も多かったと記憶しております」と、当時ならではの使い方もあったようだ。  現在ではスタッフの提供の工数削減にも一役買うドリンクバーだが、こうした戸惑いがあると、説明を行ったり、時には付き添ったりするなど、逆に工数が圧迫される場面もあったことが想像される。また、同氏によればラインナップも現在とは違っており「コーヒーのお替わりサービスから始まっていますので、最初はコーヒーや紅茶など十数種類のホットドリンクのみの提供でした」とのこと。
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お替わり自由に戸惑う利用者も
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Boogie the マッハモータースのドラマーとして、NHK「大!天才てれびくん」の主題歌を担当し、サエキけんぞうや野宮真貴らのバックバンドも務める。またBS朝日「世界の名画」をはじめ、放送作家としても活動し、Webサイト「世界の美術館」での美術コラムやニュースサイト「TABLO」での珍スポット連載を執筆。そのほか、旅行会社などで仏像解説も。

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