“スーパー銭湯”発祥のお店、開業当時の不安「建設費5億円、入浴料330円で採算が」
何事にも始まりはある。そしてそこには、想像もつかない状況や苦労も。例えば「スーパー銭湯」。今では全国各地に当たり前のように存在する施設だが、スーパー銭湯という言葉の発祥である温浴施設は、現在8店舗を展開する「竜泉寺の湯」(愛知県)。その誕生にはどんな裏側があったのか、同施設を運営するオークランド観光開発株式会社の、副社長である松永哲明氏と専務の松永尚忠氏に話を聞いた。
日本最初のスーパー銭湯「竜泉寺の湯」が誕生したのは1989年。スーパー銭湯という言葉の誕生の裏側について副社長は次のように話す。
「当初は『夢の健康銭湯』にしようと検討していましたが、インパクトに欠けるということで再考して『スーパー銭湯』としたんです。もちろん『飛び抜けている』という意味もありますが、それまでの公衆浴場(いわゆる町の銭湯)よりも、様々な設備を取り揃えていることがわかるように、沢山の商品を取り揃えている『スーパーマーケット』からも言葉をもらった形です」
まさに、普通の銭湯にはない種類のお風呂やサウナが特徴となるのがスーパー銭湯。一方、当時から風呂の種類が多い施設としては健康ランドも存在していたが。
「健康ランドは宿泊もするため規模も大きく、人件費がかなりかかっていたようです。そのため2000円程度の入館料を取っているところが多かったです。私どもは、人件費を最小限に抑えて、安く提供しようと考えていました」(松永専務)
現在は、業界規模も大きくなったスーパー銭湯だが、最初は”銭湯以上健康ランド未満”というニッチなビジネスモデルを狙っていたのだ。
種類の多いお風呂とサウナを安く提供しようと始まったスーパー銭湯。開業当時の入浴料はなんと330円(土日は380円)。現在と物価が違うとはいえ、驚きの安さだ。この価格設定には、ある計算があったと松永専務。
「当時、名古屋市の銭湯の入浴料が290円でした。サウナがついている銭湯もわずかにあり、200円の別料金がかかっていました。そこで、サウナの利用率を調べてみると約20%だということがわかったんです。私たちは全てのお客様にサウナを提供したかったので、銭湯の入浴料290円にプラス40円で提供を始めました」
施設の大きさやサービスがかなり違い、ランニングコストも肥大するスーパー銭湯。それでも安くスタートさせた背景には、先代社長の強い思いがあったと松永専務は話す。
「先代が1960年ごろからサウナ業をやっていまして、サウナとお風呂に入るのが大好きでその良さを沢山の人に知ってもらい、健康長寿のためサウナとお風呂を大衆化させたいという信念があり、そのためには安くなければいけないという思いで始めました」
スーパーは「飛び抜けた」の意味だけではなかった
バブル期に入浴料330円の安さ
Boogie the マッハモータースのドラマーとして、NHK「大!天才てれびくん」の主題歌を担当し、サエキけんぞうや野宮真貴らのバックバンドも務める。またBS朝日「世界の名画」をはじめ、放送作家としても活動し、Webサイト「世界の美術館」での美術コラムやニュースサイト「TABLO」での珍スポット連載を執筆。そのほか、旅行会社などで仏像解説も。
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