更新日:2023年08月03日 11:25
仕事

ビッグモーター不祥事問題。「自賠責保険」で保険会社が儲けを出すカラクリ

自賠責保険の粗利は1割程度?

 保険会社の利益は大きく2つあります。預かった資金を株式や債券、不動産などに投資して増やす運用益と、商品そのものから得られる利益です。  自賠責保険の保険料も、他の保険と同様に資金が滞留するため、各保険会社が運用を行っています。しかし、自動車損害賠償保障法(自賠法)で、運用益の使途については、自賠責保険の収支改善や自動車事故防止対策などの費用に活用することが義務付けられており、保険会社の利益にはなりません。自賠責保険は運用益全額を他と区分して、積み立てなければならないのです。  ただ、そうなると、保険会社は自賠責保険を取り扱うインセンティブがありません。この保険は本来、国が実務を含めた全事業を行うべきものですが、保険会社に委託をすることで経費を節約している側面があります。従って、保険会社が損をしない程度の手数料が必要です。それが付加保険料です。

究極とも言える薄利多売ビジネス

 自賠責保険は純保険料と付加保険料で構成されており、付加保険料率で損害調査費や営業費、代理店手数料が決まります。  この純保険料率と付加保険料率を出す基となる基準料率は、保険会社の契約データや支払データをベースとして計算し、厳格な審査を通して決められています。付加保険料率が絶対額として決められているわけではありません。
ビッグモーター

※自動車損害賠償保障制度の概要より

 警察庁の「自動車損害賠償保障制度の概要」に目を通してみました。少し古い資料で、かつて24か月契約の自家用車の保険料が3万円を超えていた時代のものです。  これによると、付加保険料率は概ね2割程度。営業費が全体の1割程度になっています。これが保険会社の利益(粗利)になると考えられます。  現在の自賠責保険は24か月で17,650円。保険料は大幅に下がりました。営業費として徴収している率が1割程度で大きく変わっていないと仮定すると、24か月の保険で粗利が2000円にも届いておらず、人件費や地代家賃などを加味した営業利益はほとんど出ていないというのが現実でしょう。  裏を返すと究極とも言える薄利多売ビジネスであり、販売数が多ければ多いほど1件当たりの固定費負担が減って利益が出やすくなることを示しています。
次のページ
正味収入保険料は全体の1割程度…
1
2
3
フリーライター。大企業から中小企業まで幅広く経営支援を行った経験を活かし、経済や金融に関連する記事を執筆中。得意領域は外食、ホテル、映画・ゲームなどエンターテインメント業界
記事一覧へ
おすすめ記事
ハッシュタグ