更新日:2023年08月30日 15:24
エンタメ

伝説のレディース暴走族雑誌「ティーンズロード」初代編集長が語る、「“引退”があったから警察も許してくれた」

暴走族1万人なのに、発行部数は18万部

――編集部に遊びにくる暴走族は、どんな感じだったのでしょうか? 比嘉 礼儀正しかったですよ。印刷所の人がきて、「この人たちが刷っているんだよ」と教えたら、立ち上がって「いつもありがとうございます!」と敬語を使い頭を下げる。ビシ!っと一本筋は通っている。見本刷りをみて、誌面づくりのアドバイスを貰ったこともあったね(笑)。 ――ヤンキーの助言が、誌面作りに活きている、と。 比嘉 ティーンズロードの売り上げが伸びていくなかで、編集者の悪癖として“実験”がしたくなった。ある号の表紙を、文字をなくして、中央にイラスト1点だけに。余白たっぷりで、我ながら「洒落てるな~」と思っていたら、遊びにきた暴走族に「ダメダメ。これは絶対売れないよ!」って。そしたら本当に大ハズレ(苦笑)。また、ある号では統率の取れた暴走族を撮影し、当時流行っていたマンガ・ホットロードを意識し、彼らを“セピア調”にして掲載したんです。そうしたら発売日に彼らから鬼のようなクレームの電話がきて、「なんで俺らがカラーじゃねぇんだよ!」って。コンビニで目を引く雑誌って、やっぱり大衆性は違うんだよなーと実感したね。表紙は文字いっぱい、色使いもド派手。そしてお洒落すぎない大衆性。この感覚はその後に作った「GON!」「実話ナックルズ」にも活かされている。 ――巻頭は臨場感のある、集会が多かったですね。 比嘉 やっぱり“悪いもの”をしっかり見せなくてはいけない。大勢が集う追悼集会、引退式に密着するなど、臨場感も強く意識していた。ただ、“走っているところ”は載っていない。理由は暴走行為の“証拠”になってしまうから。掲載号もズラすことも多くて、警察からも多々、「この誌面の暴走族は何月何日に撮影した?」と問い合わせもきても、「2年ぐらい前ですかねぇ」なんて誤魔化したり(苦笑)。 ――人気ピーク時は発行部数18万部を超えていたのは驚きました。 比嘉 実は当時、暴走族自体は全国で1万人もいなかった。それでは商売にならない。だから創刊時に想定していた読者層は、“悩んでいる少女たち”だった。毎朝学校に通い、しっかり部活に励む正当な健康優良児は、2~3割しかいなかったと思う。その2~3割は、「プチセブン」のような真っ当なものを読むし、後発のうちでは太刀打ちするのは難しい。やっぱり思春期なので、将来、親との関係性、恋愛、いっぱい悩みはある。悩んでいる少女たちに対して、レディースを“アイコン的存在”にしようと思いついた。彼女たちは明確に生きているからね。だから毎号、レディース総長のインタビューは毎回入れるし、「総長のお悩み相談」もした。それが当たった。ほかにも「ヤンキー風メイク術」もあれば、「はじめての産婦人科」もある。 ――総長のお悩み相談は意外でした。 比嘉 男性の暴走族に夢を聞けば、「全国制覇っす!」みたいに熱過ぎる人が多い。でも、レディースは「将来は彼氏と一緒にお店をやりたい」とか、「親に迷惑をかけたから、親の跡をついで美容師になる」とか。女性は早熟なこともあり、暴走族でも真剣に考えていることが多い。だから、読者の相談にも真摯に答えてくれることが多かった。
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録音された“シンナーを止めたい”少女たちの悲痛な声
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