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「今いちばん稼げるから」若い日本人女性が歌舞伎町で“立ちんぼ”するワケ

密着取材で実感“もっと本気で向き合わないとダメだ”

琴音さん(仮名)

街娼の琴音さん(仮名)は、舞台女優でもある(提供写真)

——そういう子たちと約1年、高木さんは向き合ってきたわけですね。 高木:LINE交換しているので、取材を抜きにしても彼女たちの今後は見守っていきたいなと思っています。まあ、連絡が取れなくなってしまった子がほとんどなんですけど。 ——何とも掴みどころがないというか。 高木:彼女たちと付き合っていると、実際に面倒なこともたくさん起きるし、みんなしたたかですね。琴音ちゃんはもともと知り合いなので、普通にお茶を飲むこともあるんですが、いま振り返ると、最初は彼女に本気で向き合えていなかったなと。取材で話を聞くにせよ、こっちは1時間ぐらいかなって感覚じゃないですか?  でも、彼女たちは3時間でも4時間でも話したいんです。そんななかで、僕がちょっとでも時計を気にすると、“早く帰りたい”という気持ちが伝わってしまって。突然、こっちが興味を示すようなスゴい情報をぶっ込んできたりする。そこでハッとした部分もありますね。“もっと本気で向き合わないとダメだ”って、途中から改めたんです。 ——いまは仕事において、コスパやタイパ(※かけた時間に対して得られるもの)を気にしないといけない時代ですもんね。 高木:自分自身、彼女たちに“取材者”として成長させてもらったと思っていますね。

“怒られるんじゃないか”と思いながらも書き切った

——ところで、舞台でも活動する琴音さんは、今後女優として売れそうなんですか? 高木:まあ、売れてほしいですよね。彼女の背景も取材を通じて知っているので、舞台を観に行って泣けました。“人に伝わる”演技って、上手い下手はさておき、そういうパッションみたいなものが大切じゃないですか。  私の想像ですけど、「いつか有名になった時、そういう経験を話すのもアリ」と、彼女なりに考えているのかもしれないですね。わかりませんが。 ——アイドルのように顔出しをして情報発信するような街娼も最近は増えているとか。 高木:めちゃくちゃ多いわけではないですけど、増えてはいますね。顔出し風俗嬢と同じような感覚で、やっぱり、“より稼ぐため”にそうやってSNSで発信しているんだと思います。 ——最後に、本書は高木さんのなかでも特別な1冊になりましたか? 高木:ホストの問題や、彼女たちが抱える障害の問題など、“どこかから怒られるんじゃないか”と思いつつ、今まで書かなかったことも全て思いっきり書いたので。自分で言うのもなんですが、実際いちばんよく書けたと思いますね。 <取材・文/伊藤綾>
1988年生まれ道東出身、大学でミニコミ誌や商業誌のライターに。SPA! やサイゾー、キャリコネニュース、マイナビニュース、東洋経済オンラインなどでも執筆中。いろんな識者のお話をうかがったり、イベントにお邪魔したりするのが好き。毎月1日どこかで誰かと何かしら映画を観て飲む集会を開催。X(旧Twitter):@tsuitachiii
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ルポ 新宿歌舞伎町 路上売春

ベストセラーノンフィクション『売春島』の著者・高木瑞穂が、新宿歌舞伎町のハイジア・大久保公園外周、通称「交縁」(こうえん)の立ちんぼに約1年の密着取材を敢行。路上売春の“現在地”をあぶり出すとともに、彼女たちそれぞれの「事情」と「深い闇」を追った――。
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