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24時間テレビ「余命半年」の父親が家族と北アルプス登山に挑戦。娘と一緒に見たかった光景

近場の山である大山でトレーニングも実施

 登山決行の日は7月下旬と決まったものの、登山経験者である加治川さん以外、奥さんと娘さんについては山登り経験はゼロ。なので、いきなり北アルプスに挑戦するのは危険だと判断し、登山のトレーニングを実施したそうです。 「まず、4月から何度か15kgくらいの荷物を背負って、低山でのトレーニングを始めました。標高1700メートルの大山を登ってみました。ガンを患ってからは全く運動していなかったので、登山道を40~50メートル歩くだけで、当初はかなり疲れてしまい、『これは大丈夫かな』と一瞬不安になりましたね……。6月半ばには隣県にある大山の頂上まで、なんとか登り切ることができました」  そして迎えた7月30日。長野県松本市に入り、7月31日から8月2日まで2泊3日をかけて撮影クルーとともに登山をスタート。当初は「登頂できる可能性は50%くらい」と思っていたものの、番組スタッフのおかげで、その不安はかなり払しょくされていたとか。 「今回の撮影に同行してくださったクルーの方々は、山のプロフェッショナル集団だったんです。僻地のロケになれているので、登山の技術も自分より上のレベルの人ばかり。また、万が一の場合に備えて、ドクターも旅に同行してくれました。そんなプロ集団と一緒に行けたのは、とても心強かったです」  鉄壁のスタッフに加えて、思わぬ偶然も加治川さんに味方します。 「テレビ局の方が、山岳ガイドさんを雇ってくれたんです。そのガイドさんが、自分が山小屋でアルバイトしていた時の同僚で……。『こんな偶然あるんだ!』と本当にびっくりしました。おかげで、とても気持ちがリラックスしましたね」

登山初日にかかったドクターストップ!

 しかし、いざ登山が始まってみると、ガンに冒された身体では、なかなか思うようには進めないという現実が。家族やスタッフのサポートはありつつも、精神的にも体力的にも「キツかった」と語ります。 「最もきつかったのは初日でした。若い頃は30分で登れたルートが、気付いたら1時間かかってしまう。このペースだと大分苦戦するな……と嫌な予感がしました」  あまりにも辛そうな加治川さんの様子を見かね、初日の夜、ドクターから告げられたのは2日目以降のルート変更の提案でした。ただ、加治川さんとしては、初日が一番高低差の多いルートだとはよくわかっていたため、事前に何度も打合せをして、このルートを決めて、散々準備してきたのに、それを変更されるのは困る……と大きく反発したそうです。 『そもそもガン患者が登山をする時点で、100人の医者が全員ストップをかける行為だとわかっています。もし、ドクターの言葉を素直に聞くような人間だったら、わざわざここにきて山に登ったりしません。それでも、この企画に参加しているのは、それなりの気持ちがあるからこそ。あと、“もうこれ以上はダメだ”という体調については、自分も経験上よくわかっているので、やらせてください』と。そこまで伝えたら、ドクターも理解を示してくれて『わかりました、当初のルートを進みましょう』と言ってくれました」
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家族への負担や登頂へのプレッシャーは「きつかった」
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お父さんは、君のことが好きだったよ。「余命半年」の父が娘へ残すことば

愛娘に伝えておきたい
“いのちのメッセージ”

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