更新日:2023年11月08日 19:55
エンタメ

<漫画>“栄養ドリンク感覚で覚醒剤を打つ”人も…「西成に潜入した記者」が感じた一般社会とのギャップ

往時、住人のほとんどが日雇い労働者だった西成(あいりん地区)は、近年ではホームレスや生活保護受給者を囲う福祉の側面を見せ、YouTuberや旅行客が訪れる観光スポットへ変貌を遂げている。2022年には「星野リゾート」の参入も話題となり、大阪万博に向けた再開発も進行中だ。 表向きな街へ様変わりする今だからこそ、かつて貧困や差別などの社会問題が凝縮されていた西成本来の姿を伝えたいーー。この街を舞台にしたドキュメンタリー漫画『西成ユートピア』(新潮社)は、こうした動機から連載が始まったそうだ。 舞台は2018年。同年に刊行された『ルポ西成 七十八日間ドヤ街生活』(彩図社)を原案に、当時の街並みや人間模様を再現している。そこで本記事では、原作の作者である國友公司氏に、当時の記憶を辿ってもらいつつ、西成や漫画について思うところを語ってもらった。
西成ユートピア

『西成ユートピア』(新潮社)

懲役30年の前科者と共同生活

僕が『ルポ西成』を執筆するため、西成に向かったのは2018年。ちょうどYouTuberが来始めた時期で、西成が明るみに出る転換期だったと思います。 ただ、滞在初日から身の危険を感じて帰りたくなりました。1泊1200円の簡易宿泊所に泊まり、風呂に入っていたら、シャブ中と思われるおじさんが剃刀を持ちながら僕のことを睨みつけてきたんです。その人は幻覚で架空の人物が見えていたようですが、てっきり僕は殺されると思い……(苦笑)」(國友氏、以下同じ) いきなり西成の洗礼を受けた國友氏だが、界隈にはこうした薬物中毒者や前科者、アル中、ギャンブル中毒者など、一般的な社会では生きていけないような人種が常駐していたという。 「飯場(建設現場や解体現場で働く肉体労働者たちの寮)で共同生活していた人の中には、複数の殺人を犯して懲役の累計が30年だった前科者もいました。普通に隣合わせで洗濯したり飯を食っていたので、当初はビクビクしていたのを覚えています。 あとはとにかくシャブ中が多い。もはや覚醒剤経験者が多数派で、他の日雇い労働者と話していると『兄ちゃんシャブやったことないんか?』とフランクに言われるんですよ。仕事へ行く前に活力を入れるため、“栄養ドリンク感覚で覚醒剤を打つ”ような人もいるとよく聞きました。もはや罪の自覚はなく、あっけらかんと犯罪行為を繰り返しているようにも映りました」

西成は「磁場が歪んでいる治外法権な街」

「他にも、日当の前借り、たかが数千円を、毎日ギャンブルや酒に注ぎ込む人が大半。僕が給料を律儀に貯蓄していると話すとよく驚かれました。西成には生活保護受給者もたくさんいますが、全然働けそうなおっさんもいるんですよ。でも彼らはすでに人生を諦めている感じで、貧乏ながらパチンコや覚醒剤をやり、闇市で買った裏DVDなんかで性欲を処理している。 『現場であくせく働いても月収は20万円ほど、それなら生活保護で13万円ほどもらって、だらだら過ごしていたほうが良い』と、完全に開き直っているんですね。そうしたアウトローな人たちと共に時間を過ごしていると、西成は磁場が歪んでいる治外法権な街だと実感しますね。そう言う意味では、漫画のタイトルにもなっている“ユートピア”らしい側面もあるのかもしれません」
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「コンプラ度外視の作品」を目指したい
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1995年生まれ。大学卒業後、競馬会社の編集部に半年ほど勤め、その後フリーランスに。趣味は飲み歩き・散歩・読書・競馬

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