エンタメ

二階堂ふみ29歳、“障がい者施設”で働く父が好きになった理由「人って大人になっても変化するんだ」

施設の子たちと遊ぶのが自然だった

二階堂ふみ

映画『月』に出演する二階堂さん

――二階堂さんご自身は、障がい者の方と触れ合う機会はありましたか? 二階堂:通っていた保育園に、定期的に障がい者施設に住む同世代の子たちが遊びに来ていました。そこでのレクリエーションがすごく楽しくて。決して同じ言葉や体の使い方ではなくても、触れ合いは楽しかったし、彼らの作るレクリエーションの面白さも感じていました。地方だったことも大きいかもしれません。 ――都市部とは違いを感じますか? 二階堂:景色の中に人がいて、その輪のなかに障がい者の方も自然にいるんです。そうした環境で育ったことは大きいと思います。

事件を忘れてしまうことが一番よくない

月

(C) 2023『月』製作委員会

――公開になったばかりの出演作『月』は、実際の障がい者施設殺害事件をモチーフに書かれた、辺見庸氏の小説がベースです。 二階堂:あの事件が起きたときのことは、本当によく覚えています。個人的に消化できていないし、消化しきれない問題だと思っていました。ただ、この事件を忘れてしまうことが一番よくないことだとも思っていました。私自身、人としてちゃんと社会の抱える問題に向き合わないといけないし、事件自体が、誰かの遠い話ではなくて自分の話なんだと自覚して考えていきたいと思って、この映画に参加しました。 ――本作のさとくん(磯村勇斗)の言動や、起こす事件そのものもですが、二階堂さんの演じる同僚・陽子の投げかける言葉も、宮沢りえさん演じる主人公と同じように、物事に向き合い直すきっかけになります。それにしても、辛い作品、役柄だったかと。 二階堂:しんどかったです。今回は、自分の役柄の作品における立ち位置といったものを考えられる余裕もなかったと思います。そもそも「作品として作ってしまっていいのだろうか」という気持ちもどこかにあったことも事実です。
次のページ
作品として作ってしまっていいのだろうか
1
2
3
ケーブルテレビガイド誌の編集を経てフリーランスに。映画周辺のインタビュー取材を軸に、テレビドラマや芝居など、エンタメ系の記事を雑誌やWEBに執筆している。親類縁者で唯一の映画好きとして育った突然変異。X(旧Twitter):@mochi_fumi

記事一覧へ
【公開情報】
』は新宿バルト9、ユーロスペースほかにて全国公開中
(C) 2023『月』製作委員会
おすすめ記事