二階堂ふみ29歳、“障がい者施設”で働く父が好きになった理由「人って大人になっても変化するんだ」
2016年7月26日未明に、相模原市の障がい者施設で、戦後最悪(当時)となる大量殺人事件が発生した。この事件の衝撃を、いまもはっきり覚えているという俳優の二階堂ふみさん(29歳)は語る。「生きていくことって、効率とか生産性だけじゃないと思う」と。
――『月』では、障がい者施設の職員を演じています。ふだん障がいを持つ方と接する機会はありますか?
二階堂ふみ(以下、二階堂):数年前から、父が障がいを持つ方々の入居している施設で勤めているんです。そこで働くようになってからの父がすごく好きで。いまの父を見ていると、当事者を知る人になった変化がすごく伝わってきます。圧倒的に人が足りてないこととか、施設が抱える現実的な問題についても、実際に目で見て感じているようです。
――お父様とそういったお話をされるんですね。
二階堂:大人になってからでも、人っていろんなことに気づいて変化するんだなと思います。父から聞いてショックだったのは、お正月でも家に戻れない人がほとんどだという現実です。介護する家族が大変だからという場合もありますが、原因の多くが、地域で周囲の迷惑になるからだと。
――地域の目というのは確実にありますね。昔は強い差別があったと思いますが、でも今は差別そのものが見えづらくなっているのかもしれません。
二階堂:施設なども、本当は私たちが住む町の中にもっとあっていいはずですよね。それが閉ざされた山の中にあったりする。それこそがいまの社会を現わしていると思います。環境がいいから、空気がきれいだからといった感じではない。私の父がそうであるように、実際に触れると心を寄せるようになったりする。生きていくことって、効率とか生産性だけじゃないと思うんです。
――たしかにそうですね。
二階堂:生産性のために人は生まれたわけじゃない。何かを生まないとか、何かを作らない人だから価値がないというわけではない。忙しい人だった父が「ご飯の量が決まっていてさ。もっと食べさせてあげたいんだよ」と言っている姿を見ると、純粋によかったですし、一人ひとりが触れ合うことで、もっと何か変わるんじゃないかなって思うんです。
同事件をモチーフに描かれた出演作『月』が10月13日に全国ロードショーとなった。そもそも障がい者施設は「私たちが住む町の中にもっとあっていいはず」と言う二階堂さん。それが「心を寄せる」ことにつながるはずだと。現在、そうした施設で働く父親の変化を目の当たりにして、よりそう感じると、明かしながら語った。
施設の障がい者が正月にも家に帰れない現実
生きていくことって、効率とか生産性だけじゃない
ケーブルテレビガイド誌の編集を経てフリーランスに。映画周辺のインタビュー取材を軸に、テレビドラマや芝居など、エンタメ系の記事を雑誌やWEBに執筆している。親類縁者で唯一の映画好きとして育った突然変異。X(旧Twitter):@mochi_fumi
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