更新日:2023年10月31日 14:12
ライフ

「一日100人の生徒」が訪れる“保健室の先生”。多忙でも「来るもの拒まず」の理由

「摂食障害の危険性」を認識できない大人たち

 これまで困難な問題を抱えた生徒は「多数思い浮かぶ」としながらも、青柳氏は摂食障害の難しさを実感していると話す。 「摂食障害の根底に、何らかによる心理的な不安定さがあることはままあります。したがってその根底の部分を解決しなければ病気は治らないわけですが、教員のなかには、『痩せてるから、食べれば治るでしょ?』という程度の理解しかない人もいます。  体重がギリギリまで落ちきるに至らない場合は、周囲からは『少し痩せてきた』としか見えず、本人の内面の葛藤などが可視化されにくいという問題があります。そのため親御様も危険性を認識できず、お話をしても『でも成績も上がってきているし、さほどの問題を感じません』という方もいらっしゃいます。  痩せていくというのは、生徒が身を削ってSOSを出している証拠です。生命を燃やしてまで伝えたいことが何か、キャッチできる大人が増えるといいなと感じます。どんなに生徒の体重が限界まで落ちていき、車椅子で登校していた事例も経験しました。専門家への受診は早いほうがいいので、回復までかなり時間を要したようです」

「頭痛を訴え続ける生徒」の背景には…

 一時的な怪我のため訪れるのではなく、保健室登校やたびたび来室する子たちには、ある共通点があると青柳氏は言う。 「人の感情の動きに対して非常に繊細なところでしょうか。そして受け入れてくれる大人を求めているのだと思います。たとえば主訴として頭痛を訴えていても、それが改善しないのは背景に家族や教室での問題を抱えているからです。あるいは湿布を貼って欲しいという単純な訴えでも、貼っても貼りきれていないところが気になって何度も保健室に来る子もいます。そういう子は、ゆっくり話を聞いて心を落ち着かせるようにしています」
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卒業した生徒から結婚式に招かれることも
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ライター、エッセイスト。可視化されにくいマイノリティに寄り添い、活字化することをライフワークとする。『潮』『サンデー毎日』『週刊金曜日』などでも執筆中。Twitter:@kuroshimaaki

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