『社畜のススメ』を外国人に読ませてみたら
ビジネス本ブームの日本。己を鼓舞してくれたり疲れたココロを名言で癒してくれたり、サラリーマンのいかなる悩みも受け止める充実っぷりである。が、裏返せば、現状への不満不安の表れでは? 世界各国、ビジネス本の売れ筋を見れば、その国の経済や社会、文化が見えてくる。ならば、日本のビジネス書は外国人からはどう見えるのか?
◆世界の人が日本のビジネス本を読んでみた!!
まずは敢えて今、会社への従属を推奨する『社畜のススメ』をオーストラリアの金融マン、クリスさんに読んでもらう。
「未経験者ならボスに反対意見を言うのは控えるべきだし、最適な仕事の仕方もわからないなら、基本は会社やボスの言うとおりにするのが賢い。経験や知識が豊富なボスから得るものは少なくないから」と、意外にも共感!? と思いきや、「でも、人格や自立心を家に置いてオフィスに行くなんて考えられない。『自分らしさ』がないというのは西洋の文化ではそもそもありえない。個性を尊重し、いろんな文化や視点を認めて、より豊かな企業が生まれるんだから」とバッサリ。
『社畜のススメ』はいわば、「自分らしさ」を必要以上に求める風潮へのアンチテーゼである。自分らしさが当たり前ならば、過剰に固執する必要はなく、そうできない自分に苦しむことはないわけで。日本での“個性”の取り扱いの困難さを痛感した次第。
お次は、ウクライナからの留学生エレナさんに、『憂鬱でなければ、仕事じゃない』を渡す。
「圧倒的な努力」は実を結ぶという名物編集者・見城徹氏の成功論を、藤田晋氏が拝聴している本である。
「例えば、ウクライナでは電話はかけたほうが切るのがマナーです。こうした習慣の違いはありますが、礼儀正しさや謙虚さなど、この本から学ぶべきことは多いと思いました。特に勤勉さは、正直、ウクライナ人にはあまりないので」
なんでも、日本人がよく言う「がんばらなきゃ!」という言葉。ロシア語にももちろん「がんばる」という言葉はあるが、エレナさんによると、自分を励ますこの「がんばらなきゃ!」という言葉はそのニュアンスを訳すのがとても難しいのだとか。こんなところにも国民性は出るよう。
「勤勉さが大切だとわかっていても、どんなに努力してもそれだけでは成功できないのがウクライナの今の現状です。だからキャリアに固執するより、楽な道というか、家族を大切にしながら自分の好きな仕事を楽しくやりたい、そう思うんです」
●『社畜のススメ』
「個性」や「自分らしさ」を否定。凡人は、組織の教えに絶対服従し、指示命令のとおりに働く「社畜」となり、模倣を重ねることによって成長できると説く(藤本篤志・新潮新書)
●『憂鬱でなければ、仕事じゃない』
見城徹と藤田晋という2人のカリスマ社長の仕事術。見城氏の数々の成功を導いたという「圧倒的努力」の大切さ、秘訣が35の言葉を切り口に語られる(見城徹・藤田晋/講談社)
― 各国ビジネス本の「何で?」なベストセラー【11】 ―
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