雪や雨で滑らないタウンユースの靴とは?アウトドアシューズは意外と滑る!
こんにちは、シューフィッターこまつです。靴の設計、リペア、フィッティングの経験と知識を生かし、革靴からスニーカーまで、知られざる靴のイロハをみなさまにお伝えしていこうと思います。急に冷え込んできた東京。降雪も始まっている地方もあるようです。そこで今回は秋冬の降雪や、雨を乗り切る靴を紹介いたします。
キャンプでの濡れた石の上や軽登山では大活躍してくれたトレッキングシューズ。靴底がデコボコしていて濡れた岩場や、ぬかるんだ土では滑らなかったのに、雨の日のアスファルトのではいきなり滑ることがあります。
他方、なんのデコボコもない革底の靴がまったく滑らなかったなんてことも。雨でぬれたアスファルトで「滑る/滑らない」の原理を知らないと、秋雨・雪のシーズンの街中では文字通り「痛い目」を見ることになります。
気候変動によって、街中でもアウトドアシューズを履く人が増えています。サロモンなどのおしゃれなデザインであればカジュアルからジャケットスタイルまで似合うので重宝します。
ところがこの手の靴は、アウトドアではめっぽう滑りにくいものの、都市のぬれたアスファルトでは油断すると滑ります。
理由はいたって簡単で、デコボコの靴底に対してまっ平らな路面は、接地面積が小さくなるから。地面がデコボコであれば、靴底はデコボコでも正解です。逆に地面が平らであれば、靴底も平らのほうが滑りません。
例えば、なんの滑り止めもついていないツルンとした革底の靴は、歩き方さえ間違えなければ雨の日でも意外に滑りません。平らな路面に対して接地面積が大きくなるので、「革底=滑る」というのは思い込み。実は逆なのです。
革底で滑ってしまう方は、ヒールが革だからです。歩いているときはカカトから接地します。リペアをやっていた時代に「ハーフラバー」というつま先半分にゴムを貼る加工をしていましたが、「それでも滑る」とお困りの方には、ヒールもゴムに替えることで解決していました。はじめに接地するパーツを革からゴムに替えるだけで革底でも滑らなくなります。
革底の靴は高級品ですから、私も普段の革靴にはゴム底を愛用しています。そんなゴムも無数の種類がありますので、具体的な滑りづらさを比べてみましょう。
雨・雪のシーズンには靴売り場に「防滑(ぼうかつ)仕様」と銘打った靴が並びますが、ハズレもあります。「防滑仕様」という言葉にはJIS規格にも法的根拠もありませんので、あくまでメーカー基準。
個人的に眉唾なのは「セラミック配合」。たしかに滑りづらいものがほとんどですが、アイスバーンの上ならまだしも、コンビニの濡れた床の上を、セラミックが一体どれだけ引っかかるでしょうか?
「クルミの殻」「ガラス繊維」も同様。素材単独だと効力は期待できません。おそらくはスタッドレスタイヤからヒントを得たのでしょうが(ミシュラン社やグッドイヤー社などのタイヤメーカーが靴のソールを作ることも多々あります)、靴底をひっくり返したときに、全体ではなく真ん中にしか防滑素材が使われていないものは経験上、滑ります。
タイヤとは違って端の部分は滑るので、横から押されたり思わぬところから接地すると、てきめんに滑ります。また、素材があとから接着されているため、防滑素材の部分だけが剥がれてくることがあります。靴用の接着剤とはいっても水には弱く、また熱でも剥がれます。まして一部が地面に食いつくので、接着剤が耐えきれません。
案外、役に立たないアウトドアシューズ
意外と滑る「防滑仕様」
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こまつ(本名・佐藤靖青〈さとうせいしょう〉)。イギリスのノーサンプトンで靴を学び、20代で靴の設計、30代からリペアの世界へ。現在「全国どこでもシューフィッター」として活動中。YouTube『シューフィッターこまつ 足と靴のスペシャリスト』。靴のブログを毎日書いてます。「毎日靴ブログ@こまつ」
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