「持続可能な競馬」を実現する
先週行われたエリザベス女王杯は馬番1-2-3という決着。直線、馬場の内側に進路を取った馬が上位に
写真/橋本健
——『レース質マトリックス』という理論を考案したきっかけは?
立川:私は常々、
「持続可能な競馬」を標榜しています。これは私にとっての競馬における勝利が「毎週競馬を楽しんで、馬券を買いたいレースを全て買って、1年間でお金が減っていない状態」であるからです。
これを達成するためには、3つ要素が必要です。
・毎週必ず競馬ができるだけの時間と資金の確保
・勝つために勝負レースを絞らずとも戦えるだけの予想力の向上
・たくさんのレースを限られた時間で予想することができる予想理論の構築
「レース質マトリックス」はこの目標の達成のため、すなわち私にとっての「競馬に勝つ」ことを実現するためにつくり出した予想理論になります。前作ではその理論について詳説しましたが、新刊はこの
「勝利」を達成するための実践的なテクニックや心構えをまとめたものになっています。ですので、一般の競馬ファンの発想、つまり
「目の前のレースを当てたい」「今日一日で勝ちたい」という思いの積み重ねのうえに年間回収率100%超を目指すために考案したと言えますね。
——確かに、「勝ちたければレースを絞れ」と言われても、趣味として馬券を買っているのに、「目の前のレースを買うな」では本末転倒ですもんね。
——先週の日曜日もエリザベス女王杯、福島記念ともにズバリだったと伺いました。
立川:この2レースは私のサロン(立川氏が主宰するオンラインサロン『競馬と共に人生を歩むサロン』)では口を酸っぱくして伝えていた理論がピタリとハマったものでした。
エリザベス女王杯は京都芝2200mで行われます。このコースは、発走後に1~2コーナーでペースが緩んだ後、向正面を3角まで緩やかに上るレイアウトでかつ外回りであることから、スローペースから上がり3~4F戦になるのが特徴です。私は「上がり特化コース」と呼んでいますが、距離適性などはあまり関係なく、近走で速い上がりをコンスタントに使っている馬が好走しやすいコースになっています。
また、直線ではバラけるため、内外はフラットで距離ロスが小さい分、直線インを通せるほうが若干有利。レース質として
「内枠・差し・短縮・スローペース」で設定しました。このレース質に合致するのが、1枠1番の
ブレイディヴェーグと2枠2番の
ルージュエヴァイユ。そのほかの高速上がり巧者は外枠に入ったため、この週にとある雑誌から公開予想を依頼されていたのですが、この2頭を本命対抗にして提供しました。
結果はご存じのとおり、内枠差し馬の中で近走上がり3F33秒前後の高速上がりをコンスタントに使っていた
ブレイディヴェーグと
ルージュスティリアがワンツーを決めましたが、京都芝2200mのレース質を知っていれば当然の決着だったと言えます。
——まさに「内枠・差し」決着でしたね。福島記念の方は、3連複156.0倍、3連単845.5倍という大波乱になりました。
立川:こちらは、エリザベス女王杯以上に、レース質が如実に表れたレースです。福島記念が行われる福島芝2000mは、発走地点が下り坂のうえに、最初のコーナーまでが長く、先行争いが激しくなってハイペースになる先行馬受難のコースです。そこに、先行馬がそろい、一目で差し決着になることは判断できました。
立川氏による重賞レース質分析表(線が引かれている馬は消し。太字は特にオススメの馬)。残った4頭が1、2、3、5着
設定したレース質は「外枠・差し・短縮・ハイペース」。先行馬が苦しくなって直線内目は渋滞するので、外枠から馬群の外を押し上げられる馬を評価。また、上がりが掛かる競馬になるので距離短縮ローテが有利=距離延長馬は全て軽視という予想です。
先行馬と距離延長馬、そして近走不振だった馬を除くと、残ったのはカレンルシェルブル、ホウオウエミーズ、ダンディズム、アケルナルスターの4頭のみ。馬券の組み方も非常に簡単でした。
実際のレースでは、残った4頭が1~3着と5着を占め、3番人気→12番人気→4番人気の順でほぼ完璧な的中となりました。こちらも前出の公開予想で提供した買い目が3連単845倍を含む、合計17万円超の払い戻し。大きな反響があったのですが、レース質という概念を理解していれば、至って順当な結果だったといえます。
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そんな絶好調の立川優馬さんに、日曜日に行われるマイルチャンピオンシップについての話も伺いました。後編はマイルチャンピオンシップ当日に公開予定です。
文/松山崇
馬券攻略誌『競馬王』の元編集長。現在はフリーの編集者・ライターとして「競馬を一生楽しむ」ためのコンテンツ作りに勤しんでいる。