「キッチンの天板」はステンレスか人工大理石か、セラミックか?
今、住宅系のYouTube界隈を騒がせている男がいる。動画チャンネル『ジュータクギャング』の押村知也だ。設計から建築、インテリアコーディネイトに至るまで住宅に関するすべてをこなす住宅のスペシャリスト「住空間クリエイター」である。歯に衣着せぬ彼の発言は、わかりやすくて痛快。『ジュータクギャング』は、更新のたびに視聴者の心をつかみまくっている。
天板とは、最上段に設置された作業台のことを指す。ことにキッチンにおいては、この天板にどんな素材を用いるかが、使い心地に大きな差をもたらす。こだわりたい人にとっては難問だ。
キッチンの天板といえば、多くの人はステンレスを想像するかもしれない。しかし、「現在は非常に多岐にわたる」と押村は話す。
「人工大理石、人造大理石、天然石、セラミック、モールテックスなどを最近はよく目にしますね。キッチンの天板については、まず前提として、ステンレスは過去のもので悪いというわけじゃないです。ステンレスはサビないし衛生的で長持ちする。表面にエンボスやバイブレーション加工を施せば、キズも入りにくい。飲食店の厨房で使われるのはほぼステンレスです。価格も手頃。ただし、清掃を怠ると水垢がつきやすく、くもりが目立つことも。以下の話は、『そのうえで』という注釈付きで聞いてほしいです」
昭和から平成にかけてのステンレス一強時代が過ぎた頃、流行り出したのが人工大理石だという。
「メーカーで人工大理石と書いてあるものは、ポリエステル系とアクリル系のものがあります。人工大理石の弱点は、柔らかく熱に弱いこと。すなわち、傷が入りやすく黄ばみやすいということです。とくにポリエステル系は価格も安く、一見どちらかわかりにくいのですが、使わないほうがいいでしょう。アクリル系であればデュポン社が開発した『コーリアン』などグレードの高いものを選ぶといい」
名前の似ている人造大理石は、天然の石を砕いて、モルタルなどで固めた素材。耐水性が低いため、最近はあまり使用されていないのだとか。
「海外で一般的なのは、御影石や大理石などの天然石。素材としては最高峰です、ただ、重くて扱いにくいのが難点。日本ではさほど用いられません。あとはセラミックやモールテックス。前者は歯の治療でよく聞くかもしれませんが、土を焼いた陶器のような素材のことです。熱に強く硬いので、いい素材だとは思うのですが、『欠けた』『ひびが入った』ということ聞くことがあります。割れやすいわけではありませんが、そういったリスクも考慮しましょう。後者はモルタルを塗ってつくる素材です。無機質でクールな見た目は雰囲気があっていいのですが、油染みが残りやすく取れにくいという欠点を持っています」
ステンレスは時代遅れなのか?
海外で一般的なのは?
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(おしむらともや)スタイラス所属。20代で建築、都市計画、インテリア、暮らしについてカナダ、アメリカで学び、輸入住宅などを手掛けるも挫折、住宅とは何かを見失う。大手ハウスメーカーや大手デベロッパーにコンサルティングして感じた「業界の嘘」と「都合の良い慣習」に納得できず、悪しき慣習にまみれた日本の住宅づくりからの逸脱が始まり、住宅業界の異端児となり、1000棟以上の建築設計を手掛ける。2022年7月にYoutubeチャンネル『ジュータクギャング』を開設。近著『美しい家のつくりかた』
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『美しい家のつくりかた』 1000軒の家を建ててわかったこと |
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