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令和ロマン優勝!『M-1グランプリ2023』採点分析。“トップバッター不利説”を覆した緻密な計算

「M-1大好きです!来年も出ます!」

 最終決戦に残った3組は、さや香ヤーレンズ令和ロマンの3組。トップバッターが最終決戦に駒を進めたのは2005年の笑い飯以来。さや香の「2年連続ファーストラウンド1位通過」に至っては、2003年のフットボールアワー以来である。  令和ロマンは1本目と異なり漫才コントで町工場を、ヤーレンズは1本目に引き続き漫才コントでラーメン屋を、さや香は1本目とスタイルをガラリと変えて「見せ算(みせざん)」という謎の計算方法で大会を沸かせる。  最終決戦のネタ順は芸人たちが選べるようになっているが、たいていはファーストラウンドの順位に沿って3位→2位→1位の順にネタを披露していた。トップよりも最後に披露した方が審査員の印象に残りやすいので、1位の組がトリを選ぶのが普通だった。  今大会も、ネタ順は令和ロマン(3位)、ヤーレンズ(2位)、さや香(1位)の順だった。しかしこのネタ順、大反省会での令和ロマンくるまの発言によると「番組が盛り上がるように、2本目にどんなネタをどの順番でやるのか、3組で話し合って決めた」のだそう。みんな自分の優勝がかかっている場面なのに……!  その成果もあってか、最終決戦の審査は最高に盛り上がった。令和ロマンとヤーレンズに交互に票が入り、最後に松本人志の「令和ロマン」票で優勝が決まったのだ。過去に4-3で優勝が決まることはあったが、交互に名前が出るのは初めてのこと。名前がめくれるたび、客席の歓声がどんどん悲鳴に変わっていった。
M-1グランプリ2023最終決戦

『M-1グランプリ2023』最終決戦採点一覧(作表/井上マサキ)

 優勝後の心境を聞かれたくるまは「嬉しいです!中川家さん以来のトップバッターで優勝できて!」と叫び、カメラは無言で一礼して拍手を贈る中川家礼二を映す。ファーストラウンドでも最終決戦でもトップバッターだったのは、中川家も同じだった。  放送終了直前、10秒ずつコメントを求められた2人は「M-1大好きです!来年も出ます!(くるま)」「えっ……来年も出るみたいです(ケムリ)」とまさかの参戦表明。過去にはフットボールアワー、NON STYLE、パンクブーブーが優勝後に再び参戦して決勝まで残ったことがあるが、2連覇はまだいない。令和ロマンは結成6年目、現行ルールならあと9回も出られる。若きチャンピオンが、また緻密な計算で定説をひっくり返してしまうかもしれない。 <TEXT/井上マサキ イラスト/まつもとりえこ 編集/アライユキコ> 【まつもとりえこ】 イラストレーター。『朝日新聞telling,』『QJWeb』などでドラマ、バラエティなどテレビ番組のイラストレビューを執筆。趣味はお笑いライブに行くこと(年間100本ほど)。金沢市出身。X(Twitter):@riekomatsumoto
ライター。大手SIerにてシステムエンジニアとして勤務後、フリーランスのライターに。理系・エンジニア経験を強みに、企業取材やコーポレート案件など幅広く執筆するかたわら、「路線図マニア」としてメディアにも多数出演。著書に『たのしい路線図』(グラフィック社)、『日本の路線図』(三才ブックス)、『桃太郎のきびだんごは経費で落ちるのか?』(ダイヤモンド社)など。X(Twitter):@inomsk
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