松本人志不在の『IPPONグランプリ』。代理チェアマン・バカリズム“現役目線コメント”が冴え渡る
2月3日夜9時から放送された第29回『IPPONグランプリ』(フジテレビ)が、今までとは大きく違っていたのは「チェアマン代理」バカリズム。1月8日、芸能活動休止を発表した松本人志(ダウンタウン)に代わって大会を統べる座に就いた優勝回数最多「絶対王者」の采配に注目が集まった。波乱ぶくみの大会を『着信御礼!ケータイ大喜利』(NHK)レジェンドライター・井上マサキが解説、お笑い大好きイラストレーター・まつもとりえこがイラストを担当します。
誰もいないチェアマンのブースに、バカリズムが「こんな感じなんだ……」「うわぁ……うわぁ……!」と声を漏らしながら入ってくる。そんなシーンから29回目となる『IPPONグランプリ』は始まった。
初回から大会チェアマンを務めていた松本人志の芸能活動休止を受け、急遽「チェアマン代理」となったバカリズム。2009年放送の第1回以来、28回中27回に出場し、優勝回数は断トツの6回。『IPPONグランプリ』において、チェアマン代理の座に最もふさわしい人物と言っていいだろう。
とはいえ、バカリズムは前回も優勝している現役プレイヤー。もうあの大喜利は見られないのか……と、悲しむ声もあったが、始まってみれば現役目線でのコメントをいくつも聞くことができた。チェアマン代理からの視点も交えながら、今大会を振り返りたい。
Aブロックの出場者は田中卓志(アンガールズ)、赤羽健壱(サルゴリラ)、ヒコロヒー、堂前透(ロングコートダディ)、川島明(麒麟)の5名。
本来は西田幸治(笑い飯)が出場予定だったが体調不良となり、スーパーサブとして控えていたサルゴリラ赤羽が急遽出場することに。出場は収録前日に決まったそうで「この世で一番怖いことだと思う」と赤羽。
今回、お題が発表されてから最初の答えが発表されるまでに、バカリズムによる「お題の印象」を聞ける時間があった。第1問「アホなフリして芸能界のことを聞いちゃってください」では「1問目からハイリスク・ローリターンな匂いのするお題。一人目でどんな答えをするかで流れが変わるから、どこまでぶっこむのか……」と、第3問「長風呂太郎の物語の最後を「~とさ」をつけて教えてください」では「大喜利らしいお題ではあるけど、長風呂の材料が意外と少ないんですよ。どこをチョイスして昔話あるあるを組み合わせるか」と、そのお題の見どころを的確な言葉で表現してくれる。
その第3問、5人がそれぞれIPPONを取った回答を見ると「長風呂+昔話」のここを切り取ったか、というのが見えて面白い。
田中「やっと風呂から出たと思ったら長スキンケアをはじめましたとさ」
ヒコロヒー「長風呂太郎と短風呂半助が戦った跡地は豊洲埋め立て場になってるとさ」
赤羽「岩盤浴は二度としないと誓ったとさ」
堂前「月に帰っていくかぐや姫を風呂場の小さい窓から見送ったとさ」
川島「太郎がついに長風呂から出たときスペインではサグラダファミリアが完成しましたとさ」
新しい登場人物を加えたり、「風呂場の小さい窓」に着目したり、長風呂の時間軸をサグラダファミリアが完成するくらい長くしたり、それぞれのプラスアルファにセンスが見えてくる。
全員がIPPONを量産する大激戦のまま、ほぼ横並びで迎えた最終問題「この時代『節分』で鬼に豆を当てるのがコンプライアンス的にまずいです どう対処する?」では、トップを走る川島を田中が猛追。田中はこのお題だけで5本ものIPPONを獲得し、残り1分で川島に追いつく。しかし、最後の最後で川島が出した答えが美しかった。
「朝から一緒に普通に過ごして、鬼が『今日節分なのにな』という気分になったところで、別れ際に豆をそっとプレゼント……」
このIPPONで川島が田中を引き離し、Aブロック勝ち抜け。バカリズムは「川島さんがすごいのはね、この局面であの長い文章を出せるハートですよ」と称える。田中がIPPONを量産する横で、焦らずにこの長文の答えを書けるのだからすごい。
現役プレイヤーのコメント
Aブロック:バカリズム「川島さんがすごいのは……」
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ライター。大手SIerにてシステムエンジニアとして勤務後、フリーランスのライターに。理系・エンジニア経験を強みに、企業取材やコーポレート案件など幅広く執筆するかたわら、「路線図マニア」としてメディアにも多数出演。著書に『たのしい路線図』(グラフィック社)、『日本の路線図』(三才ブックス)、『桃太郎のきびだんごは経費で落ちるのか?』(ダイヤモンド社)など。X(Twitter):@inomsk
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