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『キングオブコント2023』採点徹底分析。カゲヤマとニッポンの社長が作った「天井」、サルゴリラがつかんだ“優勝という魚”

 史上最多3036組がエントリーした『キングオブコント2023』(10月21日、TBS)。「コントの怪物になれ」というキャッチコピー通り「怪物」がそろった決勝を制し、優勝という魚をつかんで第16代チャンピオンの座に輝いたのは、初出場のサルゴリラだった。
キングオブコント

大接戦を制したのは、ファイナリスト中最年長(44歳と43歳)のコンビ、サルゴリラ(イラスト/まつもとりえこ)

 今大会はいつにも増して接戦で、審査員たちは「今まで一番難しい」と採点に頭を悩ませるほど。いったい何が起きていたのか。採点結果から今大会を振り返ってみたい。  M-1グランプリ、キングオブコント、R-1グランプリ、THE W、THE SECONDと、有名お笑い賞レースの採点結果を分析してきたお笑い好きテレビっ子・井上マサキ@inomsk)が解説、お笑いを愛するまつもとりえこ@riekomatsumoto)がイラストを担当します。

カゲヤマとニッポンの社長が作った「天井」

 審査員は2021年より引き続き、山内健司(かまいたち)、秋山竜次(ロバート)、小峠英二(バイきんぐ)、飯塚悟志(東京03)、松本人志の5人。5人×100点の500点満点で採点し、ファーストステージ3位までがファイナルステージに進出。最終的に、ファーストとファイナルの合計点で優勝が決まる。
キングオブコント

全ての採点を表にまとめた。赤字はその審査員がつけた最高点で、青字は最低点。出場者および審査員ごとの平均点と標準偏差(点数がバラつくほど値が高い)も合わせて算出している(作表/井上マサキ)

 今大会の空気を作ったのは、トップバッターのカゲヤマと言っていいだろう。襖の向こうから聞こえる「大変申し訳ありませんでした!!」という大声と、19時台のお茶の間にいきなり映し出される際どい下半身! その強烈なインパクトに審査員たちも「くだらない」「最高」と、469点の高得点を付けた。これは審査員5人体制でのトップバッター最高得点だ(それまでは2019年のうるとらブギーズ463点)。  さらに2組目のニッポンの社長も、不死身のケツに辻がバイオレンスを繰り出し468点と2位につける。そしてこれ以降しばらく、カゲヤマとニッポンの社長が与えたインパクト(お尻と暴力)が「天井」になってしまうのだ。審査コメントでも「刺激が足りなかった」「あの爆発には届かなかった」という評が何度か上がるほど。

異例だった松本人志の採点

 彼らの衝撃を超えないと95点以上はつけられない。一方で全ての組のレベルが高く80点台もつけにくい。その結果、90点~95点に点数が集まり、8組目まで463点~469点に6組がひしめく大混戦になった。80点台をつけた審査員が出なかったのも、大会史上初のこと。  普段、松本人志はM-1でもキングオブコントでも、なるべく全組に点差をつけるよう点数を散らして採点する。今回のように、93点を付けた組が3組もいるのは異例だ。ファイナルステージ前のトークで松本は「それくらい接戦」と話し、他の審査員も「0.0いくつの差」(飯塚)「僅差も僅差」(小峠)「数字が足りない」(秋山)と嘆いていた。  トップ2組が作った「天井」と、高レベルの戦いが生んだ90点台前半の攻防。その閉塞感を破ったのが、9組目に登場したサルゴリラの482点だった
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「1人だけ最低点」がついた組が多いのは
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ライター。大手SIerにてシステムエンジニアとして勤務後、フリーランスのライターに。理系・エンジニア経験を強みに、企業取材やコーポレート案件など幅広く執筆するかたわら、「路線図マニア」としてメディアにも多数出演。著書に『たのしい路線図』(グラフィック社)、『日本の路線図』(三才ブックス)、『桃太郎のきびだんごは経費で落ちるのか?』(ダイヤモンド社)など。X(Twitter):@inomsk

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