4位『リバーサルオーケストラ』
(日本テレビ系 23年1月11日〜3月15日放送)
番組公式HPより
オーケストラを舞台にした大人たちの青春ドラマ。高校のサッカー部、あるいはラグビー部を軸に展開する往年の学園青春ドラマのフォーマットを大筋で踏襲した。
主人公は元天才ヴァイオリニスト・谷岡初音。
門脇麦(31)が演じた。初音は心因的な問題で10年前からヴァイオリンが弾けなくなった。
そんな初音に音楽活動を再開させたのが、
ポンコツ集団「児玉交響楽団」のマエストロ・常葉朝陽(
田中圭)。非エリートたちによるチームの発足から物語が始まるのは学園青春ドラマの定番だ。
以降も学園青春ドラマの常道と言える展開が続く。仲間がピンチに陥ると、チームが一丸となって乗り切った。たとえばフルート首席・庄司蒼(
坂東龍汰)の経済苦やヴィオラトップサイド・桃井みどり(
濱田マリ)と娘の大学受験をめぐる確執などである。「ワン・フォア・オール、オール・フォア・ワン」である。
最後にエリートたちとプライドを賭けて戦うところも学園青春ドラマだった。
奇をてらわなくても視聴者が喜ぶ作品がつくれることを証明した。お仕事ドラマが量産される中、手間を惜しまずにオーケストラを舞台にしたのは新鮮だった。
(テレビ朝日系 23年7月13日~9月14日)
テーマは地元愛。派手さはなかったが、身近で普遍性があった。
主人公は
中村倫也(37)が扮するミステリー作家の三馬太郎。東京での暮らしにやや疲れてしまい、父親の故郷である山間部のハヤブサ地区に移住した。そこで
新興宗教が起こす連続放火や地区乗っ取り計画に立ち向かう。
登場人物たちの地元への思いはそれぞれ。太郎は長閑なハヤブサ地区が気に入り、その平和を乱す人間が許せなかった。太郎が入った消防団の山原賢作(
生瀬勝久)や藤本勘介(
満島真之介)らはごく当たり前のように地元を深く愛していた。
同じ消防団員の徳田省吾(
岡部たかし)の思いも賢作らと一緒と見られたが、実際には一向に繁栄しない地元にもどかしさを感じていた。
自分の人生が冴えない理由の一端も地元にあると考えた。このため、教団による地区乗っ取り計画に協力する。
東京から移住してきた映像ディレクターの立木彩(
川口春奈)は教団の新シンボルになり、地区を乗っ取るつもりだったが、やがて
地区の豊かな自然や純粋な住民たちに惹かれていく。さらに太郎の説得を受けたことから、教団を裏切る。
見る側は
自然と地元愛とは何かについて考えさせられた。地区で生まれた教団の先代のシンボル・山原展子(
小林涼子)は地元を愛してやまなかったが、養家の都合や自分の貧困と体調悪化から、帰郷を果たなかった。展子の無念に胸が痛くなかった人もいるのではないか。
物語の途中までは放火や殺人の犯人探しが絡んだ難解なストーリーに見えたが、
終わってみると、すべてが各登場人物のハヤブサ地区への思いを軸に展開していた。
構成が抜群に良かった。