エンタメ

もう一度見たい!「2023年ドラマ」ベスト5。『うち弁』は5位、『ブラッシュアップライフ』は2位

2位『ブラッシュアップライフ』

(日本テレビ系 23年1月8日~3月12日)
ブラッシュアップライフ

番組公式HPより

 安藤サクラ(37)が演じる主人公・近藤麻美の5周目の人生までが描かれたタイムリープ作品。当初は「麻美がまた人間に生まれ変わるために人生をやり直す個人的物語」に思えた。  ドラマ、映画のタイムリープ作品の多くには、主人公に「人類滅亡の危機を救う」などスケールのデカイ目的があり、それが前半で明かされる。だが、この作品の場合、目的がなかなか見えなかった。  麻美の個人的物語でないことが分かったのは終盤になってから。麻美は自分の日常に欠かせぬ存在だった幼なじみのなっち(夏帆)とみーぽん(木南晴夏)の飛行機事故死を阻止するため、5周目の人生の全てを賭ける。個人的物語でもコメディとして十分面白かったが、この目的が浮かび上がった途端、感動作に姿を変えた。  タイムリープと友情が絡むところは筒井康隆氏の「時をかける少女」などのジュブナイル小説を思わせた。麻美と6周目人生の宇野真里(水川あさみ)がパイロットになって幼なじみ2人を救うミッションは生還という結果が見えていてもスリリングだった。  空気みたいな存在なので普段は気にも留めないが、幼なじみや友人との日常は重い。それを見る側にあらかじめ認識させておかないと、終盤における麻美の捨て身の行動に説得力が出ないから、成人式やカラオケ、ファミレスでの1コマなどありふれた風景が繰り返し描かれた。計算の行き届いた作品だった。

1位『VIVANT』

(TBS系 23年7月16日~9月17日放送)  放送前のストーリー説明が一切ないという超異例のスタイルだったが、蓋を空けると瞬く間に圧倒的な支持を得た。豪華キャスティングやモンゴル長期ロケが話題の中心になったものの、構成も出色だった。 「VIVANT」の意味が自衛隊の非公然組織「別班」らしいと分かったのは2回。堺雅人(50)が演じた乃木憂助が別班の一員であることが判明したのが4回。元警視庁公安部員で国際テロ組織・テントのリーダーであるノゴーン・ベキ(役所広司)が自分の父親だという確証を乃木が得たのは5回。警視庁公安部の警視・野崎守(阿部寛)が乃木の正体が別班だと知るのも同回。謎が次々と浮上し、徐々に明かされていったから、目が離せなかった。実際、この作品をスマホを見ながら視聴した人はほとんどいないのではないか。  謎解きのある作品はテーマが弱くなってしまいがちだが、この作品は例外だった。「家族の絆とは何か」と「国家と政治家の役割とは何なのか」という骨太のテーマが織り込まれていた。  ベキは潜入先のバルカ共和国の内戦で妻の明美(高梨臨)を失い、その深い悲しみもあって、日本への帰国の意欲を失う。憂助も死んだと思っていたものの、生きて別班になっていると、敵対する立場ながら殺せなかった。憂助もまたベキに対しては非情にはなれなかった。  また、ベキのテロの目的は内乱によって親を失った子供たちを育てるための資金集めだった。バルカの政治家がやるべきことだが、その義務を放棄したからだ。一方、憂助が命懸けで守ろうとしたのは美しい日本と国民。父子は国士であるという点で一致していた。  脚本のつくり方、カット数、エキストラなど全てが欧米の大作ドラマに負けない作品だった。 <文/高堀冬彦>
放送コラムニスト/ジャーナリスト 1964年生まれ。スポーツニッポン新聞の文化部専門委員(放送記者クラブ)、「サンデー毎日」編集次長などを経て2019年に独立。放送批評誌「GALAC」前編集委員
1
2
3
おすすめ記事