更新日:2024年01月26日 11:00
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「わかりやすい弱者には優しいのに…」高学歴なのに苦しむ“難民”たちの辛い現実

「わかりやすい弱者」に対しては優しく手を差し伸べるのに…

 
貧困

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――実際に阿部さんが出会った高学歴難民のエピソードを教えてください。 阿部:ある人は、偏差値の高い高校を卒業して、一流大学へ入学しました。家庭が裕福ではないため、奨学金を借りて大学院まで進学し、計1000万近くの借金を抱えたそうです。その借金返済の相談に乗ってくれた弁護士のつてで、貧困問題に取り組む運動に傾倒するようになったとのことでした。ところがその運動内で待ち受けていたのは、その人に対するやっかみからくるイジメです。 支援者として貧困にあえぐ人を救うリーダー格の人たちは、わかりやすい弱者に対しては優しく手を差し伸べる一方で、立派な学歴や肩書を持つ人に対しては冷淡だったといいます。ちなみにリーダー格の人たちは学歴もなかったようです。あくまでその運動の内部の人がということかもしれませんが、可哀想な人にはずっと可哀想でいてほしくて、自分たちよりも恵まれていると思われる人に対しては救いの手は差し伸べないのかもしれません。

「とりあえず学歴」という考え方は危険

――さまざまな高学歴難民をみてきた阿部さんからみて、“難民”を作り出す親側の共通点はあるのでしょうか? 阿部:高学歴難民を作り出す親については、熱狂的ともいえるほどの教育ママ・パパであったり、逆に子どもが勉強だけをやりすぎるのを止められない親であるなど、さまざまなタイプがいます。私が思うのは、「学歴を取得したあと、どうするんですか?」という問いに答えられない人が非常に多いということです。学生時代を“成功”させても、その先も人生は続きます。しかも、成功と幸福は重ならない部分も多い。そんななかで、「とりあえず学歴」という考え方に囚われていては、危険ではないでしょうか。 勉強についていえば、悪いことではないから子どもが学び続けるのを止められない親は多いですよね。しかし、世の中には「良いこと、必要なこと」ではあるけど「稼げないこと」はいくらでもあります。それらの塩梅をどうしていくのか、本当に子どもが学び続けるのに黙って投資するのが正解なのか、というのは常に考えなければいけないことだと思います。
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生きていくなかでもっとも虚しいのは…
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ライター、エッセイスト。可視化されにくいマイノリティに寄り添い、活字化することをライフワークとする。『潮』『サンデー毎日』『週刊金曜日』などでも執筆中。Twitter:@kuroshimaaki

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