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日本の住宅のほとんどが“照明選び”を間違っている。「明るければいい」の誤解とは

専門家不在で取り付けられる悲劇

まとまった光を照射する集光タイプは、リビングやダイニングテーブル、キッチンやデスクの天板など、壁ではなく作業する面を照らして使うという。 downlight002「集光タイプはたとえば8畳のリビングであれば、2灯を並べてテレビとソファの間の床を照らしてください。その場合、ソファは奥行きがあるので真ん中ではなくテレビ寄りを照らします。2灯の間は10㎝でOK。ダイニングであれば、150㎝サイズのテーブルには2灯、180㎝以上の天板があれば3灯でテーブルを照らしましょう。手もとが明るくなり、料理も映えます。ライトのサイズは、直径7~15㎝で数種類あります。小さいほど雰囲気は出ますが、値段が高くて施工が難しい。天井高が2m40㎝~2m80㎝程度であれば、10㎝にしましょう。形は60型と100型がありますが、普通の家でれば60型で十分です」

配灯位置だけでホテルのような高級感

部屋に光を思い通り回すには、熟練の知識と経験が要る。ドラマ映画、舞台やライブでも、専門の照明スタッフがいるのはそのためだ。 「新築の場合、家の配灯は設計者やコーディネーター、照明メーカーのプランナーが計画してお客様が決定します。つまり素人が計画して素人が決めているわけで、当然出来はよろしくない。配灯を理解していない設計者は無闇やたらに部屋を明るくします。お客様から『暗い』というクレームを受けたくないからです。であればムリせずにシーリングライトを使えばいい。リビングの中心に虫の眼のように6灯もダウンライトをつけるのは、シーリングライトの代わりにダウンライトを使うという根本的な勘違いの表れです」 バーでもホテルでもレストランでも、夜の時間を落ち着いて過ごせる場所というのは、たいてい屋内に入った瞬間は少し暗く感じるものだ。 「配灯計画とは、本来、光の陰影を考えてつくるものです。照らすべき壁を照らして同時に暗くなる箇所をつくって陰影をつける。一方、作業する手元は明るくします。そういったテクニックに集積が配灯なのです。最後に裏技を紹介しておきましょう。細長い廊下のある家であれば、思い切って壁に寄せて、15㎝の位置に集光タイプをつけてみてください。ホテルの内廊下のようなキリッとした高級感がでて、めちゃくちゃカッコよくなりますよ」 確かに照明は明るければいいものではないのだ。 (取材・文/ツクイヨシヒサ)
(おしむらともや)スタイラス所属。20代で建築、都市計画、インテリア、暮らしについてカナダ、アメリカで学び、輸入住宅などを手掛けるも挫折、住宅とは何かを見失う。大手ハウスメーカーや大手デベロッパーにコンサルティングして感じた「業界の嘘」と「都合の良い慣習」に納得できず、悪しき慣習にまみれた日本の住宅づくりからの逸脱が始まり、住宅業界の異端児となり、1000棟以上の建築設計を手掛ける。2022年7月にYoutubeチャンネル『ジュータクギャング』を開設。近著『美しい家のつくりかた

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1000軒の家を建ててわかったこと

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