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人生最後の転職は“63歳まで”にしておくべき理由「再雇用の限界まで勤め上げてはいけない」

60代後半を見据えて62歳で転職?

シニア転職

写真はイメージです

 65歳以降、そして70代での活躍をAさんが見据えるなかで、何を最もリスクだと感じたのだろうか。それは「スキル不足」だとAさんは語っている。  定年まで勤めた決して小さくない組織の中で、様々な部署への定期的な異動が新しい経験とスキルを得るチャンスだったというAさん。しかし、安定が保証されず、職を転々とする可能性のある65歳以上の環境に、約40年間、同じ職場しか知らない自分が飛び込んで、果たして生き抜けるのだろうか? そんな不安は高まるばかりだった。  そのため、Aさんは早めの62歳で転職活動を始めたが、抱いていた不安は的中してしまう。60歳以上を積極的に採用する企業や求人は、その多くが介護や清掃など未経験歓迎の仕事、つまり、これまでの経験やスキルが活かせないものだった。  定年までの仕事に近く経験やスキルが活かせそうな仕事は、そもそも求人がないか、あっても選考に苦戦して内定が得られない。Aさんは最終的に定年までの窓口業務に近い電話営業の仕事に就いたが、65歳を過ぎてからの転職では、もっと苦戦して慌てたかもしれないと振り返る。  冒頭で触れたように55歳で大幅に高くなる就職のハードルによって、Aさんのように年齢がネックで該当する求人がないことも多い。また、転職時にはこれまで勤めた会社の力や肩書の力でなく、自分自身の経験やスキルのみでの勝負を迫られるが、定年や役職定年を超えて肩書がリセットされた人は、なおのことこれまでの肩書を転職で活かしにくくなる。  50代・60代以上の転職では、会社名や肩書に頼らずに評価が得られる経験スキルを、自らの経歴の中から抽出しておく必要がある。それが「経験スキルの棚卸し」だ。  62歳で転職したAさんも、「自分には何ができるのか?」を突き詰めて考えた結果、「窓口対応でお客様に接してきた自分は、未経験でも営業電話で力を発揮できそうだ」と考え、採用担当にも評価されて内定を得た。

新しいチャレンジには“下積み期間も”必要

 年齢とともに転職が不利になる前に転職しておいたほうがいいという話をしたが、タイトルの「転職は63歳までにしておくべき」というのは、それだけが理由ではない。  企業の視点では、この先働き続ける見込みの年数がシニアと若手とで違い、シニアは「数年しか働いてもらえないんじゃ厳しい」と思われてしまう。これも少しでも早く転職を考えるべき理由となる。  また、活躍期間が短いということは、教育不要の即戦力としてすぐ現場で活躍してほしいというニーズにもつながる。シニアを採用したい企業は実務経験を重視して未経験やブランクに厳しくなりがちだ。未経験者やブランクがある場合は、“下積み期間”も考えに入れなければならなくなるので、そういった意味でも早めの転職がオススメとなる。  仮に60歳を過ぎてから、70歳ぐらいまでの活躍を見据え、これまでの経験を活かしつつも新しいチャレンジをするとして、1〜2年程度の“下積み期間”を想定するならば、さらに転職が厳しくなる節目の65歳から2年を引いた63歳までに転職をするべき、となるのだ。  冒頭で述べたとおり、活躍できる人は70代でも活躍できるが、新しいチャレンジはなるべく早く取り組むことをオススメする。
50代以上のシニアに特化した転職支援を提供する「シニアジョブ」代表取締役。大学在学中に仲間を募り、シニアジョブの前身となる会社を設立。2014年8月、シニアジョブ設立。当初はIT会社を設立したが、シニア転職の難しさを目の当たりにし、シニアの支援をライフワークとすることを誓う。シニアの転職・キャリアプラン、シニア採用等のテーマで連載・寄稿中
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