人生最後の転職は“63歳まで”にしておくべき理由「再雇用の限界まで勤め上げてはいけない」
人生100年時代。「人生最後の職場を探そう」と、シニア転職に挑む50、60代が増えている。しかし、支援の現場ではシニア転職の成功事例だけでなく、失敗事例も目にする。シニア専門転職支援会社「シニアジョブ」代表の中島康恵氏が、今回は「転職は63歳までに」との持論を解説する。
人にもよるが70歳でも80歳でも活躍する人がいる時代に、なぜ「転職は63歳までに」と述べるのか。また、どんな人が63歳までに転職すべきなのか。実際に約40年間勤めた職場から62歳で転職した人物の事例を交えながら、その理由に迫る。
タイトルで「転職は63歳までにしておくべき」と述べたが、当然ながらもっと早いに越したことはないし、60代後半でも70代でも引く手あまたで転職する人は多い。なんなら、53歳までの転職をお勧めしたいくらいだ。40代50代の転職も以前に比べて多く、一般的になったが、現在でも55歳を超えると難易度が大幅に上がる。
だがもし、あなたがほとんど転職を経験せず、一つの会社で長年勤め、60歳以降も同じ会社で65歳まで再雇用などで勤めきるつもりなら、そして、65歳以降も他の会社などで活躍し続けるつもりなら、65歳を待たず63歳までに転職しておいたほうがよい。65歳を待っていては遅すぎる。
なぜ、65歳を待っていてはいけないのか? 勤めきれる上限まで勤めたほうが安心なのではないか? その疑問に対して、実際にその後のキャリアに危機感を感じて62歳で転職した人物の事例を踏まえながら、詳しく回答していこう。
この男性を仮にAさんとすると、Aさんは新卒から勤め始めた職場を60歳の定年まで勤め上げ、さらに再雇用も経験している。対面での案内や窓口対応を行う場合もあるサービスの比較的安定した職場だった。
Aさんが新卒で社会人となった40年前は、終身雇用が当たり前。今ほど転職が一般的でなく、転職でキャリアに傷がつくように言われていた時代である。当然、Aさんも定年まで勤めるつもりで入社した。(しかし、最初の1〜2年は仕事がつらすぎて転職を考えたとAさんは恥ずかしそうに笑っていた)
新卒当時は60歳が定年だったが、徐々に65歳までの再雇用制度が整っていく。退職金は60歳の定年まで勤めればもらえるが、先輩も同僚も、多くが安定を求め、再雇用制度でギリギリまで職場に残る選択をする人が多かった。
ところが、Aさんはキャリアの中盤、再雇用制度が出来始めた頃から既に、「年齢上限まで同じ職場に勤め続けると、60代後半で逆に苦しくなる」と考えていたという。
退職金で損をしたくなかったので、60歳まで勤める覚悟はあった。そして職場に恩も感じていたので、恩返しの意味でも、人手不足の職場に2年間は再雇用で残った。だが、62歳を過ぎたAさんは職場を離れ、新天地を求めて就職活動を始めたのだった。
なぜ、再雇用上限まで勤めるべきでないのか?
40年勤め続けた職場を62歳で辞めた人
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50代以上のシニアに特化した転職支援を提供する「シニアジョブ」代表取締役。大学在学中に仲間を募り、シニアジョブの前身となる会社を設立。2014年8月、シニアジョブ設立。当初はIT会社を設立したが、シニア転職の難しさを目の当たりにし、シニアの支援をライフワークとすることを誓う。シニアの転職・キャリアプラン、シニア採用等のテーマで連載・寄稿中
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