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「三塁手の坂本勇人」にかかる期待。“晩年の宮本慎也”が理想的なキャリアか

鳥谷敬:コンバートするタイミングが遅かった?

次は、元阪神タイガース、千葉ロッテマリーンズの鳥谷敬だ。2010年代序盤から中盤にかけてゴールデングラブ賞を5回受賞。長きにわたって攻守ともに大きな存在感を示していたが、坂本と同様に35歳になるシーズン中に三塁手にコンバートした2015年:遊撃手:打率.281、6本塁打、42打点、OPS.747 2016年:シーズン中に三塁手にコンバート:打率.236、7本塁打、36打点、OPS.667 2017年:三塁手:打率.293、4本塁打、41打点、OPS.767 2017年は、3割近い打率を残しており、打撃が復調の兆しが見られたが、2018年以降は年齢的な問題に加えて、これまでの疲労や無理をしてきたツケが成績に現れ始めた。 2018年は二塁手も守りながら出場をしていたが、2019年はほとんど出場機会がなかった。ロッテに移籍後も最晩年だったこともあってか、レギュラー奪取には至らなかった。 2013年のWBCでも守っていることから、“ホットコーナー”にも上手く適応できるように思えた。しかし、打撃成績の四球や出塁率が2018年に大幅に下がっていることを見ると、「目」が衰えていた可能性もあるだろう。 参考:2015年89四球、出塁率.380、2016年75四球、出塁率.344、2017年77四球、出塁率.380、2018年34四球、出塁率.333 遊撃手として限界を迎えていた2016年も、出塁率は下がっているが、コンバート後の2017年には以前の水準に戻っている。守備の負担軽減が打撃に寄与したのではないか。 結果論ではあるが、守備範囲が狭くなり始めた2014年ごろの段階でコンバートを検討すべきだっただろう。

どんな名手でも勝てない「年齢の壁」

年齢によるパフォーマンス低下や怪我を考慮し、遊撃手の選手は30代半ばでコンバートされることが多い。守備範囲の広さが求められるポジションを守り続けることによる疲労は想像を絶するものだろう。どんな名手でも年齢には勝てないのだ。 プロのキャリア通じて遊撃手を守り続けるのは困難であることがわかる。とはいえ、他のポジションにコンバートをする時期を見極めるのは非常に難しいのだ。 なぜなら、「後継者の力量」が大きな問題になるからだ。長年レギュラーで出場している選手は、当然チームの主軸である。下手に動かすとチーム力の低下を招いてしまうわけだ。 もちろん、遊撃手のポジションをうまく継承している球団もある。具体的には、巨人だ。川相昌弘から二岡智宏、そして二岡から坂本へとスムーズに移行している。また、埼玉西武ライオンズも、松井稼頭央がメジャー移籍後に中島裕之が定着。穴を感じさせない活躍を見せ、その年に日本一まで登りつめている。
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「3割、25~30本、80打点以上」は期待できる?
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野球評論家・著作家。これまでに 『巨人軍解体新書』(光文社新書)・『アンチデータベースボール』(カンゼン)・『戦略で読む高校野球』(集英社新書)などを出版。「ゴジキの巨人軍解体新書」や「データで読む高校野球 2022」、「ゴジキの新・野球論」を過去に連載。週刊プレイボーイやスポーツ報知、女性セブンなどメディアの取材も多数。Yahoo!ニュース公式コメンテーターにも選出。日刊SPA!にて寄稿に携わる。Twitter:@godziki_55

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