門脇麦(31)“発達障害の天才料理人”役がキレまくり。どんな人物を演じても際立つ演技力と個性
「冬ドラマは期待外れ」との声も聞くが、お宝はある。その1つが門脇麦(31)主演の日本テレビ『厨房のありす』(日曜午後10時半)である。面白い上に作風が新鮮だ。
門脇が演じる主人公の八重森ありすは料理人。自閉スペクトラム症で、その特性から頑固でこだわりが強く、コミュニケーション能力に欠ける。一方で豊富な化学の知識と図抜けた記憶力を生かし、自分の店「ありすのお勝手」にやって来る客の健康状態に合う料理を提供し、喜ばれている。
第1に新しいのは、ありすのハンデを単なる個性として描いているところ。過去の多くのドラマはハンデのある登場人物を不幸な人、悲劇の人として描いてきたが、この作品は異なる。
ありすは大きな音や蛍光灯の点滅などが苦手で、周囲はそれに避けなくてはならないものの、特別扱いはしない。誰にでもある弱点と捉えている。程度の差こそあれ弱点は誰にだってあるのだ。
幼なじみで店のホール担当の三ツ沢和紗(前田敦子)はありすの弱点には気を付けつつ、文句を言ったり、あきれたり。ごく自然に接している。ありすと周囲は対等に共生している。欧米のドラマがハンデのある人を登場させる際と描き方が同じだ。
第2に新しいのは不快な人物が登場しないところ。対立構図をつくったほうが物語は盛り上げやすいため、大抵のドラマには悪党や意地の悪い人が登場するが、この作品には今のところ出てこない。
和紗は口が悪く、気が強いが、面倒見がいい。ありすの父親で大学教授の心護(大森南朋)も店の新人バイト・酒江倖生(永瀬廉)も心優しい。店の近くの商店街の人々たちもそう。ありすはときに電柱の全てに触れなくては気が済まないが、それを冷ややかな目で見たりしない。笑顔で野菜や魚を勧めてくる。
黒幕捜しやタイムリープなど、このところウケているドラマの要素は何一つない。しかし、観ていると心が和む。同じ思いだった人は多いらしく、視聴率は良い。
21日放送の初回の場合、全体値の個人視聴率こそ3・6%(世帯6・2%)と平均的だが、コア(13~49歳の個人視聴率)は3・6%、T層(13~19歳の同)は3・2%、F1層(女性20~34歳の同)は3・8%と、いずれもトップクラス。
同じ日に放送されたTBS『さよならマエストロ〜父と私のアパッシオナート」(日曜午後9時)の個人視聴率は6・7%(世帯11・6%)で、1月15日から21日までに放送された作品の中で1位だったが、コアとT層、F1層では『厨房のありす』が上回っている。若い人によく観られている (ビデオリサーチ調べ、関東地区)。
今後はありすと心護の親子関係の秘密や倖生が店で働き始めた動機が明かされるはずだから、より視聴者を惹き付けるのではないか。
コア視聴率はトップクラス
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放送コラムニスト/ジャーナリスト 1964年生まれ。スポーツニッポン新聞の文化部専門委員(放送記者クラブ)、「サンデー毎日」編集次長などを経て2019年に独立。放送批評誌「GALAC」前編集委員
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