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門脇麦(31)“発達障害の天才料理人”役がキレまくり。どんな人物を演じても際立つ演技力と個性

どんな人物を演じても漂うかわいらしさ


 門脇の地上波でのドラマ主演は同局『リバーサルオーケストラ』(2023年1月)以来、丸1年ぶり。同作品で演じたバイオリニストの谷岡初音は拗ねたり、はにかんだり、かわいらしい女性だったが、ありすもそう。小躍りしたり、慌てたり。ほかのアラサーの女優がやったら、怪訝な顔をされかねないが、門脇だとハマる。  役柄の幅が狭いわけではない。映画『愛の渦』(2014年)では乱交パーティーに参加するヒロインの女子大生役を演じ、同『止められるか、俺たちを』(16)では男性社会のピンク映画界で奮闘する助監督に扮した。一方でNHK大河ドラマ『麒麟がくる』(2020年)では主人公・明智光秀(長谷川博巳)に寄り添う準主演級の駒を演じた。しかし、どんな人物を演じてもかわいらしさが漂う。この人自身の持ち味であり、魅力の1つだろう。  門脇は1992年に東京で生まれた。幼いころからバレエを習い、プロになることを目指していたが、骨格や体つきがプロ向きではないと中学時代に自覚し、断念する。  それでも表現者になる夢は捨てられず、高校卒業前に芸能プロダクションに履歴書を送ったところ、迎え入れられた。小躍りや小走りをする演技がうまいのはバレエでの経験が生きているのではないか。  バレリーナになる夢は諦めたが、世に出るきっかけになったのはバレエ。デビューから2年後の2013年、「ガスの仮面」と題された東京ガスのCMシリーズにバレリーナ役で出ると、一気に認知度が高まった。

安藤サクラ、三浦透子。所属事務所は実力者揃い

 CMで演じたバレリーナは不振やライバルの出現といったピンチに立たされたが、仮面を付けた謎の男に助けられ、本公演にこぎつける。そんなドラマ仕立てのCMだった。頻繁に流れ、かなり話題になったから、ご記憶の人は多いのではないか。このCM以降は映画、ドラマに次々と出演する。趣味は釣り、きのこ観察など。ほかの女優が口にしたら、「本当?」と言いたくなるが、門脇だと妙に納得させられる。逆に俳優にありがちなクラブ通いやセレブとの飲み会はイメージできない。  現在所属する芸能プロ「ユマニテ」は仕事の選び方がうまい。『リバーサルオーケストラ』は2023年のドラマのベスト10内に推す人が多かったし、おそらく『厨房のありす』も高評価を得るだろう。  安藤サクラ(37)の地上波初主演作だった日テレ『ブラッシュアップライフ』(2023年)も大ヒット。4月スタートだが、早くも話題になっている同『ACMA:GAME アクマゲーム』には古川琴音(27)がヒロインで出演する。  三浦透子(27)がヒロインだった映画『ドライブ・マイ・カー』(2021年)は米国アカデミー賞の国際長編映画賞を受賞。岸井ゆきの(31)が主演するNHK『お別れホスピタル』(2月3日から土曜10時)も前評判が高い。在宅で死を迎えられない末期がん患者らが過ごす病棟の物語で、原作は沖田×華氏によるベストセラー漫画である。  所属女優たちは実力者ぞろい。ほかの芸能プロの幹部に言わせると、ユマニテは採用の際に美形であるか、身長が高いかなどを第一条件にしていない。演技の素質はあるか、個性はあるかを基準にしているという。 『厨房のありす』に話を戻すと、新しい作品と書いたが、昭和のドラマファンを喜ばせそうな設定もある。和紗の実家「三ツ沢工務店」が、故・石立鉄男さんが主演した日テレの『水もれ甲介』(1974年)の舞台である水道工事店「三ッ森工業所」とそっくり。外観はもちろん、和室の居間から台所へと続く間取りも似ている。どちらも日テレが得意とするハートフルなドラマだから、意識して再現したのではないか。 <文/高堀冬彦>
放送コラムニスト/ジャーナリスト 1964年生まれ。スポーツニッポン新聞の文化部専門委員(放送記者クラブ)、「サンデー毎日」編集次長などを経て2019年に独立。放送批評誌「GALAC」前編集委員
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