仕事

ボロボロの通勤カバンを使っていた“課長どまりの50代”が、急にハイブランドを…その裏にあった「セコすぎる悪事」

急にiPhoneやブランドのカバンを

 ある日森永さんは、同期で購買課に配属されたKさんから相談を持ちかけられました。 「Kさんいわく、『あのさ、岡村課長って、絶対賄賂とかもらっていると思う。最近、スマホが最新のiPhoneに変わったり、ボロボロの通勤カバンがハイブランドになったり…。この前もランチのあとに、そそくさと細長い封筒を受け取っていて、あれ現金じゃないかな?』と。そんなことあり得ますかね?」  確かに、足がつきにくい現金を手渡すのは常套手段ですが、会議室で渡すならまだしもランチ時なんて……と、森永さんは半信半疑でした。  ところが翌月、森永さんの部署に1本の電話がかかってきました。相手は、先月医療用の新製品を納入したばかりの顧客でした。 「電話口の担当者は深刻な口調で『納入された10台全てが、駆動後数分で停止してしまいます。とりあえず旧型でその場をしのいでいるので、大至急見にきてほしい』と、かなり慌てている様子でした」  森永さんは、開発担当者たちと一緒に納入先へ回収に向かい、すぐにチェックしたところ、電源周りの温度センサーに不具合があることが判明。 「実はこのセンサー、半年ほど前に部品調達依頼をしたとき、岡村課長に『納期の関係で代替品となる』と言われたので、よく覚えているんです。部品調達のベテランが言うことなので、疑いもなくその部品を使用した経緯があります。もしかすると、代替品の調達先から何らかの便宜が図られていたのかも、と思いました」

実はよく聞く、発注担当者へのキックバック

 幸い、他の製品でストックしておいたセンサーに取り換え、迅速な納品を行ったことで、大騒動にはなりませんでした。しかし、今回の一件で上層部のメスが購買課に入ることは避けられなかったようです。 「一言でいうと“解体”ですかね。今回勃発した問題がきっかけになったと思います。噂によると、けっこうな金品をもらっていたようですね。会社に告訴されてもおかしくないレベルですよ。でも、会社はそれをしませんでした。いろいろ大人の事情があるんでしょうね」  組織の発注担当者が、納入業者からキックバックをもらう不正は、実はよく聞く話。国公立の病院などで2023年だけでも数人の逮捕者が出ていますが、民間企業での収賄は刑法には触れず社内処分ですますことが多いのです。  その後この会社では、購買課という部署が廃止され、部署ごとによる個別の資材調達制度に切り替えられることになりました。当の岡村さんは、孫請け会社の運送会社へ転籍とのこと。ランチを奢られるぐらいにしておけばよかったのに…。 「長い間、同じポストにつくことはよくないですね。サラリーマンの人事異動が重要であることが改めてよくわかりました」 <TEXT/ベルクちゃん>
愛犬ベルクちゃんと暮らすアラサー派遣社員兼業ライターです。趣味は絵を描くことと、愛犬と行く温泉旅行。将来の夢はペットホテル経営
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