ライフ

高尾山にサンダルで登る危険な観光客も…。インバウンドで賑わう“観光地の住民”の悲痛な訴え

軽装備が招く悲劇

高尾山

軽装備で高尾山にやってくる登山初心者も多くいるようだ

 筆者も登山を嗜み、高尾山には何度となく登ったことがあるのだが、Kさんが話すように軽装備の登山客は多い。こうした軽装備の登山客の多くはケーブルカーなどで山頂に行くため、まだなんとかなる。しかし、開放的な気分になって山道に足を踏み入れてしまいトラブルになるケースも。前出のKさんは滑り落ちた観光客を目の当たりにしたことがあるという。 「昨年の秋、私は景信山から高尾山に向かって山歩きをしていたんですが、途中、高尾山から来た大学生くらいのグループと木の根っこが出っ張っている坂ですれ違ったんです。みんな軽装備で、ジーンズにスニーカーとか、そんな格好でしたね。そのとき、グループにいた女のコが、私の目の前で滑ってけっこうな勢いで2mほど滑り落ちたんです。もし巻き添えを食らってしまったら、私は横の急斜面を落ちていったでしょうね」  女のコは幸いケガもなく、自力で歩けたそうだ。聞けば景信山まで行って下山して、バスで高尾駅まで行こうとしていたと。Kさんを始め手助けした登山者から「そんな軽装備では景信山までは行くのも危険だし、景信山からバス停まで下山するルートはもっと危険だから、高尾山に戻って下山したほうがいい」とたしなめ、高尾山に引き返すよう説得したのだとか。

観光客は嬉しいが将来の不安も

 こうした状況について、高尾山に住む住民は「観光客が増えることは嬉しいが……」と複雑な胸の内を語ってくれた。 「観光客が増えたことで駅もキレイになったし、高尾山口駅には大型銭湯もできた。私が住む高尾駅も登山口までいくバスが出ているので週末はすごい人で賑やかです。人が来てくれることで、お店も増えたし、私はいいことだと思います。 ただ、これがずっと続くのか? という不安も大きいですね。見捨てられて寂れた温泉街みたいになったら、それはちょっとイヤだなと。高尾山口で飲食店やってる私の知り合いも、ずっと続くのか不安だと言います。頂上がパンク状態という話も聞きますので、もう少しケーブルカーなどの交通網や売店のあり方を整備しないと『人が多くて行きたくない』って言われて見捨てられそうですよね」
次のページ
まるで戦後の列車のような京都の市バス
1
2
3
グルメ、カルチャー、ギャンブルまで、面白いと思ったらとことん突っ走って取材するフットワークの軽さが売り。業界紙、週刊誌を経て、気がつけば今に至る40代ライター

記事一覧へ
おすすめ記事