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高尾山にサンダルで登る危険な観光客も…。インバウンドで賑わう“観光地の住民”の悲痛な訴え

まるで戦後の列車のような京都の市バス

 また、日本屈指の観光地といえる京都でも、オーバーツーリズムが問題となっている。阪急線西院駅近くに住む会社員のAさん(男性・38歳)は「もう、慣れました」と苦笑いしながら京都の現状を語ってくれた。 「バスに乗れないんですよ、あまりにも混んでて。しかも朝のラッシュ時だけじゃなく、ヘタすると一日中、バス停に人だかりができてるんです。バス停には白線などで列を整理するようなものもないので、日本人も外国人もどうやって並んでいいかわからず、バスが来るたびに戦後の列車のように我先にと入り口に群がります。でも、そのバスもやって来る頃にはすでに満車状態なので、2、3人が乗車しておしまい……だったりするんです」  バスに乗れなかった観光客はあちこちに溢れ、歩道がなかなか通れなくなる日も珍しくなく、住んでいる住民にとっては頭の痛い問題になっているという。

観光客を受け入れる体制を整えてほしい

「せめてバス停に並ぶ列を示す白線くらい描いてほしいですね。私は毎朝、娘を自転車で保育園に送っているのですが、スマホの地図を見ながら大きな荷物を持った観光客がフラフラ歩いていたり、急に立ち止まったりして当たりそうになるんです」  Aさんは保育園のパパ友たちと「最後に市バス乗ったのいつ?」などと、冗談で話しているという。Aさんはこうした状況について「観光客のマナーを非難する気になれない」とも。 「以前、京都市長が『京都は観光都市ではございません』と言ってましたが、京都から観光客を取ったら何が残るんだと。お金をしっかり落としてくれるんだから、ええやないかって。変な建前論でエラそうにする前に、住民も観光客も快適に過ごせる交通環境などを整備したらどうかと思うんです。京都の混雑っぷりは、行政の怠慢でしかないと私は思いますよ」  お金を落としてくれる人がいれば、経済は回る。しかし、観光客を受け入れる地域がキャパオーバーしてしまっては元も子もないだろう。インバウンドで好景気と浮かれるのもいいが、その先を見据えてこその「おもてなし」ではなかろうか。 取材・文/谷本ススム
グルメ、カルチャー、ギャンブルまで、面白いと思ったらとことん突っ走って取材するフットワークの軽さが売り。業界紙、週刊誌を経て、気がつけば今に至る40代ライター
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