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靴屋のセールストーク“信じてはいけない台詞”3選。長持ち、ラクの基準を疑うべし

「オンオフ兼用ですよ」

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運転には最適なドライビングシューズといえば、トッズ。8万9600円。写真は公式HPより

オフィスカジュアルの影響で、「オンオフ兼用」という売り文句は、消費者に響くものがあるようです。しかし、個人的に「ドライビングシューズ」はお勧めしません。基本的には運転専用の靴ですが、その履きやすさと柔らかさから各メーカーからオンオフ兼用として売れ続けています。 結論から言うと、ドライビングシューズは運転以外には履けません。アスファルトを歩くと、持ってせいぜいワンシーズンです。どこのメーカーでもドライビングシューズは比較的高価なのでなおさら注意が必要です。 ドライビングシューズはいちいち履き替える靴です。たいていのショップでは「ちょっとした距離なら歩けますよ」と言っていると思いますが、道路を歩くと本当にすぐに穴が空きます。リペア時代にお客さんががっかりするのは断トツでドライビングシューズでした。カカトのゴムと同時に革の本体も接地してしまうので、穴が空くのは本当にあっという間。修理はできませんし、製造メーカーにも断られるはずです。 店頭で履く分には履き心地がよく、「オフオフ兼用」という言葉のマジックに惑わされて手を出す方が多いのですが、歩けないのでは本末転倒。ドライビングシューズは、運転専用だと思ってください。

「このパンプス走れますよ」

このキャッチフレーズは本当にやめてほしいです。どんな靴でも走れるので、嘘ではありません。メーカーもそれなりに研究は……していないでしょう。フルマラソンを完走したなどのデータがあればいいのですが(紳士靴はあります)、走ったあと足がどうなっても知りませんというのが本音だと思います。 歩くだけでもトラブルの元なのに、走れば靴も足も当然痛みます。駅の階段から転げ落ちて救急車へ、なんていう光景は誰にでも想像できます。軽いキャッチフレーズが文字通り命取りになる可能性もあるのです。 この手のパンプスはリペアをやっている頃に散々持ち込まれましたが、そのほとんどがズタボロでした。こういった売り文句を鵜呑みして健康を損ねてはいけません。パンプスを履いたらオフの日はリカバリーに徹してください。 「ラクに歩けるぺたんこヒール」も嘘ではありませんが、限りなくウソに近い。ハイヒールに比べればどんな靴も歩きやすいに決まっていますが、ぺたんこの靴で長い距離は歩けません。単純に底が薄いのでダイレクトにヒザと腰に負担がかかり、つまさきに重心をかけないと脱げてしまうので、外反母趾や巻き爪に直結します。あくまで「おしゃれ靴」として割り切りましょう。 昨今の日本は、気候の変化が激しく、従来の常識が通用しなくなっています。少し前までは「迷ったら定番」でよかったのですが、ショップの謳い文句よりも自分の直感のほうが正しい場合も多々あります。「長持ち」「ラク」の基準をまず疑うところから始めてみましょう。
こまつ(本名・佐藤靖青〈さとうせいしょう〉)。イギリスのノーサンプトンで靴を学び、20代で靴の設計、30代からリペアの世界へ。現在「全国どこでもシューフィッター」として活動中。YouTube『シューフィッターこまつ 足と靴のスペシャリスト』。靴のブログを毎日書いてます。「毎日靴ブログ@こまつ
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