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濡れた靴を履くことほど不快なものはない。1分できる対策とは?

こんにちは、シューフィッターこまつです。靴の設計、リペア、フィッティングの経験と知識を生かし、革靴からスニーカーまで、知られざる靴のイロハをみなさまにお伝えしていこうと思います。
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写真/PIXTA

これから春の長雨、本格的な梅雨へと、靴には過酷な季節が始まります。濡れた靴を履き続けるほど不快なものはありません。今日は靴の雨対策についてご紹介します。

「アメダス」を使うにはコツがある

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60回ぶん使える420mlの大容量缶。2200円。写真は公式HPより

お手軽でもっとも効果的なものが防水スプレーです。手間はわずか1分。防水スプレーは値段も品質もピンキリですが、個人的におすすめしたいのは業界最大手コロンブス社で国産の「アメダス」です。防水スプレーはフッ素のミクロの膜で覆うので、通気性が失われることもなく、革やメッシュであっても素材へのダメージはありません。 アメダスは噴霧した際に、他社製品と比べても霧が細かく、最後まできちんと使いきれてコスパは抜群です。筆者もプライベートで愛用しており、大容量缶をネットでまとめ買いして、靴箱のなかに1本常備しております。 アメダスは使う際にコツがあります。それは「二度掛け」。あるとき同僚から「二度掛けってマジで効くよな」と聞き、試したところその効果に驚くばかりでした。一度スプレーして乾いたらもう一度かけるだけで、片足15秒×両足×2回=1分ですみます。これでフッ素の膜が二重になり、雨が一層目に浸透して膜が突破されても二層目のフッ素が水の浸入を許しません。その昔、娘が幼稚園児でやんちゃまっさかりだったころに、泥だらけの水たまりに突入したことがあるのですが、メッシュのスニーカーが水と汚れをはじき、パパ友から「それ、宣伝ですか?」と笑われたのはいい思い出です。 防水スプレーは靴屋や靴修理屋に置いてあるものならそれほど大きな差はありませんが、要注意なのはドラッグストアやスポーツ店に置いてある無名の格安品。500mlのペットボトルほどの大きさで500~600円程度のものは、中身がフッ素とシリコンの混合なので、靴によってはシミになります。アウトドア用品やテントに使うことが目的なので、霧も粗く、使い切る前にガスが切れるなど、値段なりといったところです。一方、値段は1.5倍ほどですが、「革・靴」に特化した製品は布にも使えます。靴にスプレーするついでにパンツの裾やカバンに掛けると、泥はねや水滴から守れるので一挙両得です。 防水スプレーは、一度雨に濡れると効果はゼロに戻ります。晴天時にもフッ素は徐々に揮発するので、効果がなくなっていきます。雨の季節は数日おきにかけましょう。 ちなみに、エンジニアブーツなどの「オイルレザー」は完全防水ではありません。オイルレザーの靴はたしかに雨には強いのですが、ミンクオイルなどの油をいくら刷り込んだところで、一度革の中に侵入してきた水分は時間差でじわじわと靴の中を濡らします。なにより革本来の通気性がなくなりカビも発生するので、靴の寿命そのものが短くなるデメリットのほうが大きいです。防水スプレーを使いましょう。

濡れた靴をドライヤーで乾かしてはいけない

靴が濡れた場合、新聞紙を詰めて乾かすのがセオリーでした。しかし、新聞を取っている家は少なくなったので、キッチンペーパーで代用します。家に帰ったら早いうちにしっかり詰め込みましょう。使い捨てカイロをなかに入れると乾きも一気に早くなります。2回ほどペーパーをとりかえたら、あとは風通しのよいところで自然乾燥と言いたいところですが、サーキュレーターを最大風力にして靴のそばでまわすと、爆速で乾きます。 サーキュレーターは、筆者が靴修理の現場にいたときも接着剤を乾かすのに大活躍でした。乾かす際にドライヤーを使ってはいけません。熱で接着剤が溶け、スニーカーの底ははがれ、革靴は革がカチカチにひび割れて、もとに戻らなくなります。
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そもそもメンテが不要な「防水靴」が大ヒット
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こまつ(本名・佐藤靖青〈さとうせいしょう〉)。イギリスのノーサンプトンで靴を学び、20代で靴の設計、30代からリペアの世界へ。現在「全国どこでもシューフィッター」として活動中。YouTube『シューフィッターこまつ 足と靴のスペシャリスト』。靴のブログを毎日書いてます。「毎日靴ブログ@こまつ

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