弁護士が詐欺まがいの広告を出す背景
ではなぜ、回収率が低い詐欺まがいの広告を本物の弁護士が出してしまうのか。そのひとつに、「広報に疎く、集客のノウハウを持たない弁護士も多いです。年配ともなるとなおさらで、
宣伝やPRは広告業者にお願いすることがほとんど」といった背景があるようだ。
「今回のケースだと弁護士が積極的に広告を出したというよりは、広告業者のほうから『
最近、国際ロマンス詐欺が流行っているので集客できそうです。広告を出しませんか?』と誘われた形。そして言われるがまま広告を出してしまった結果、詐欺被害者を誤解させるような内容になったのではないかと考えています。ただ、本来は弁護士が最終チェックをおこない、責任をもって広告を出さなければならないため言い訳にすぎません」
そして、「こういった弁護士が増えてしまうと、依頼する側のリスクもかなり大きくなってしまう」と佐久間弁護士は懸念する。2018年に発覚した“かんぽ生命”の不適切な契約問題を例に挙げ、次のように話してくれた。
「民営化されても郵便局を公的な企業だと思っている年配の方も多く、信頼を寄せている人も多かった。その厚い信用を利用して裏切ったという側面が、今回の弁護士による着手金詐欺と似通っていると思いますし、同じ弁護士として許せない部分です」
資格を持った本物の弁護士が相手ともなれば、信頼できるかどうかを見破るのは至難の業といっても過言ではない。弁護士による着手金詐欺などの二次被害に遭わないために、何かよい方法はないのだろうか。
「まず、弁護士に直接相談でき、疑問や不安に応えてくれるかということ。そして、
相談した内容がどこまで進んでいるかをこまめに確認することも大切です。また、
相談料や着手金が不要な弁護士に相談するというのもひとつの手段。相談料や着手金が不要なら、たとえ被害金を回収できなくても、さらなる出費を防げるというメリットがあります。もし、相談料や着手金が不要な弁護士に断られた場合は、回収率が極めて低いということです。」
詐欺案件を専門に扱う佐久間弁護士も、相談料や着手金はもらっていない。すると、被害金を回収できない場合は成功報酬がもらえず、相談からすべての期間がタダ働きとなる。そのため、引き受ける案件は回収見込みがあるものを選定するため、一定の条件を敷いている。
「被害金を回収できたときにいただく成功報酬にも、相談料や着手金は上乗せしません。そのため、被害金を回収できるかどうかは死活問題。世間が注目する案件などにチャレンジすることもありますが、引き受ける案件は吟味します。それでも、
回収率は約70%です」
約70%と聞けば成功率は高いと感じるが、「吟味しての約70%は決して高くはないと思います」とのこと。また、「詐欺案件は解決までに時間がかかることも多いですが、まずは相談してほしい」と言う佐久間弁護士に、被害金の回収方法や返金率についても聞いてみた。
「詐欺といっても、アフィリエイトだったり、FXの投資自動売買ツール販売だったり、儲かるノウハウを販売するといった情報商材系だったりなど種類はさまざまです。具体的な内容としては、『最初は200万円かかるけど、2か月目以降には240万円ぐらいは稼げるようになる。なので、200万円返しても、手元に40万円残る。どんどん稼げるようになるから』と、絶対に儲かるというようなことを言われて騙されてしまう」
消費者金融から200万円を借り入れして支払い、はじめた副業などが聞いていたより稼げない。それを相談すると「サポートが必要」などと言われ、どんどんお金をつぎ込んでしまうという典型的なケースも多いようだ。
「こういった相談案件は民法上の詐欺に該当する可能性もあるとは思いますが、まずは
特定商取引法や消費者契約法など特別法という法律を使って返金請求をしていきます。
その段階で80~90%ぐらい返金されることも少なくありません。そのため、内容をお聞きしてお断りさせていただくこともあるかもしれませんが、まずは諦めたり泣き寝入りしたりせず、相談してほしいです」
資格を持つ本物の弁護士が詐欺被害者を再び苦しめてしまうといった事例が露呈し、不安に感じる人も多いかもしれない。それでも、法を扱うという立場を最大限に生かし、被害者救済に尽力する弁護士がほとんどであるということを祈るばかりだ。
【佐久間大地】
詐欺トラブルを専門とする、第一東京弁護士会所属の弁護士。被害者救済のため、詐欺案件に関しては相談料や着手金をもらわず解決のために活動しているほか、〈X〉や〈LINE〉、SNS(会員制交流サイト)でも相談を受け付けている。
公式ホームページ、
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フリーライター。ライフ系や節約、歴史や日本文化を中心に、取材や経営者向けの記事も執筆。おいしいものや楽しいこと、旅行が大好き! 金融会社での勤務経験や接客改善業務での経験を活かした記事も得意