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佐々木麟太郎の17年前に“高卒で渡米した”球児は現在…「4人の先駆者」のキャリアを辿る

高校卒業後に渡米していた鷲谷修也

斎藤佑樹(元・北海道日本ハムファイターズ)を擁する早稲田実業と、3連覇を狙っていた駒大苫小牧で決勝を争った2006年夏の甲子園。当時、駒大苫小牧のエースだった田中将大(現・東北楽天ゴールデンイーグルス)とチームメイトだったのが鷲谷修也だが、実は高校卒業後に渡米している。 半年間英語を勉強した後アメリカ・カリフォルニア州のデザート短大の一般入試を受けて合格し、野球部に入部。リーグ戦で活躍したことにより、メジャー球団から調査書が送られてくるようになる。その結果、2008年のメジャーリーグのドラフト会議で42巡目(全体で1261番目)でワシントン・ナショナルズから指名を受けるが、短大から大学への編入を考えていたため辞退。翌年も、14巡目(全体で412番目)で再びナショナルズに指名され、「オフに北海道に戻って多くの人が応援してくれていることを知り、チャレンジを決めた」と意気込んで契約。しかし、2010年にルーキーリーグ開幕前に解雇され、日本に帰国して石川ミリオンスターズでプレーしたが2011年に現役を引退した。 現役引退後は、渡米した経験などを活かし、2011年に上智大学に編入し、2014年に卒業。2014年には、三井物産に入社し、現在は商社マンとして活躍している。 野球では、プロ野球選手やメジャーリーガーとはいなかったが、アメリカで生活した経験により、ポジティブシンキングになったという。アメリカの経験で「ミスを恐れない」考え方に変わり、現在のビジネスの場でもそのマインドが活かされているのだろう。

「漫画の世界」が現実に

表面上では多様性を受け入れつつあるように見える今の日本ではあるが、前途ある若者の挑戦に対しては辛辣な意見が多い傾向がある。就活時における“新卒至上主義”にも共通する話で、レールを外れることに対しての寛容さが不足している気がしてならない。まさに大谷が二刀流に挑戦した際の例が分かりやすかったと言える。 野球界において可能性を広げた出来事といえば、昨年のWBCで栗山氏がラーズ・ヌートバー(現・セントルイス・カージナルス)を選出したことだろう。次回以降にも日本にルーツを持つ選手を選出する流れを作ったことは、非常に大きな出来事だった。 佐々木の持っている「打球に角度をつけることができる能力」は天性のもの。大谷のように外国人にも見劣りしない打撃力をつけてほしい。ゆくゆくは日本を代表する打者になることを期待していきたい。 ひと昔の野球界の風潮なら、高卒後にメジャーリーグ挑戦などは、「漫画の世界」だった。佐々木の選択が当たり前になったとき、日本の野球はさらに別次元のレベルに到達するかもしれない。 <TEXT/ゴジキ>
野球評論家・著作家。これまでに 『巨人軍解体新書』(光文社新書)・『アンチデータベースボール』(カンゼン)・『戦略で読む高校野球』(集英社新書)などを出版。「ゴジキの巨人軍解体新書」や「データで読む高校野球 2022」、「ゴジキの新・野球論」を過去に連載。週刊プレイボーイやスポーツ報知、女性セブンなどメディアの取材も多数。Yahoo!ニュース公式コメンテーターにも選出。日刊SPA!にて寄稿に携わる。Twitter:@godziki_55
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