更新日:2024年04月17日 12:18
お金

3度の値上げでも「餃子の王将」が快進撃を続けられるワケ。競合の“格安中華チェーン”にはない強み

創業以来初の売上高1000億円超え

王将フードサービス

※1:既存店とは、新規開店後15か月以内の店舗及び前年・本年同月の改装店舗を除いた店舗を対象(王将フードサービス決算情報をもとに筆者作成)

 餃子の王将の業績を時系列でみると、効果的な経営戦略と卓越した経営管理技術で安定経営を実現しているのが明白である。餃子の王将は前年2023年3月期の売上は前期比9.7%増の930億2200万円で2桁に近い伸び率で成長が著しい。  今年度2024年3月期の実績も直営全店売上は925億56百万円(前年比109.1%)、と、通期においても過去最高売上を達成している。ちなみに、客数8万1735人(前年比105.9%)客単価1132円(前年比103.1%)とすべて前年比を上回っている。  また、FC売上を含む全社売上高(決算上の売上高)は、26か月連続で同月比過去最高を更新しており、通期では創業以来初めて1000億円(1009億84百万円)を突破している。顧客からの支持もあり、持続的な安定成長を実現しているようだ。

餃子の王将は直営店主体の店舗展開!

餃子の王将

餃子の王将はテイクアウトメニューにも注力

 2023年3月末の店舗数は732店。そのうち、フランチャイズ加盟店は190店舗。FC比率は26.0%で、直営店主体の店舗展開を行っている。餃子の王将は直営店が多いため、マクドナルドなどFC比率が高い外食企業と違い、各直営店の家賃や人件費の負担が重く、固定費が高いために損益分岐点は高めではある。  そういった費用構造でも、2023年度実績では、営業利益率は標準値の10%には届かないが、8.6%は確保しており、収益力に問題はない。貸借対照表を見て財務状態を分析しても、自己資本比率が74.6%と財務基盤は盤石であり、経営の安定性は評価できる。上場企業だから資本効率(ROEが10%以上なら投資価値があると判断され、5%以上なら合格点、15%以上なら優良企業といわれる)も重要指標として見られるだろうが、餃子の王将のROEは10.20%だから投資家にも一定の評価はされているだろう。ちなみに現在の株価は7700円(24年4月10日時点)である。  直営店の比率が高いと、コロナ禍のように急激な客数の減少が起こると、たちまち営業赤字に転落することがある。しかし、王将は2021年3月期に60億7300万円もの営業利益を出しており、前期と比較し、わずか2割の減益に留めるといった健闘をしている。  なぜそれらを可能にしたのか、その主要因のひとつが、テイクアウト・デリバリーの業容拡大に努めたことであり、コロナ禍に「レンチンシリーズ」の新発売や、デリバリーサービスの対応店舗拡大に動いたことが功を奏したようだ。2021年3月期のテイクアウト・デリバリーの売上高は前期の1.6倍となる246億800万円で、売上高の構成比率は2割から3割に増加しており、コロナ収束後の現在も、テイクアウトは好調を維持している。
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同じように見えても大阪王将とは別会社!
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飲食店支援専門の中小企業診断士・行政書士。自らも調理師免許を有し、過去には飲食店を経営。現在は中村コンサルタント事務所代表として後継者問題など、事業承継対策にも力を入れている。X(旧ツイッター):@kaisyasindan
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