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いずれ“1兆円企業”になる可能性も。「メガネレンズ国内シェア1位企業」がトップを走り続ける理由

なぜ高い利益率を実現できているのか

そして、世界中でHOYAとAGCしか生産していないと言われるEUVマスクブランクスでは8割ものシェアを握っています。その他の製品でも高シェアを有しています。得意分野に特化することで特定の市場において優位性を保ってきました。 また、各事業部が独立した会社のようにふるまう独立採算制も高利益率をもたらしています。本部の経営陣と業務を担当する事業部は明確に分けられており、各事業部は四半期ごとに予算を立て、予算会議では経営陣が精査します。コスト削減に余念がなく、無駄を省き利益を出すよう求められるようです。 日本企業では珍しく、HOYAはかつてより「株主重視」を掲げてきました。ちなみに新卒一括採用はせず、各事業部が採用を行うため中途採用比率が高いのも同社の特徴です。人員削減の多い企業としても知られています。

コロナ禍でも高い利益率を維持

高収益企業のHOYAはコロナ禍でも高い収益率を維持してきました。2020年3月期から23年3月期までの業績は次の通りです。 【HOYA株式会社(2020年3月期~23年3月期)】 売上収益:5,765億円→5,479億円→6,615億円→7,236億円 当期利益:1,146億円→1,252億円→1,653億円→1,688億円 売上高(ライフケア事業):3,750億円→3,418億円→4,075億円→4,746億円 売上高(情報・通信事業):1,967億円→2,010億円→2,484億円→2,443億円 21年3月期はコロナ禍での外出自粛等によりメガネ・コンタクトレンズの需要が落ち込み、ライフケア事業の業績は落ち込みましたが、巣ごもりでIT関連の需要はあり、情報・通信事業は堅調に推移。その後、22年3月期、23年3月期はアイケア市場全体の成長もあってライフケア事業は拡大しています。海外比率が高いため近年の円安も売上高の増大要因です。 ちなみに情報・通信事業においては23年3月期で横ばいとなり、24年3月期では第3四半期で150億円の減収となりました。これは半導体市場全体の動きを反映したものです。23年度はスマホ・PC需要の冷え込みや中国経済の減速などが原因で、当初より落ち込むと予想されていました。市場の景気がおよそ4年周期で上下する「シリコンサイクル」の不況期にあたります。
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売上高1兆円企業になるかも?
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経済・テクノロジー・不動産分野のライター。企業分析や都市開発の記事を執筆する。取得した資格は簿記、ファイナンシャルプランナー。趣味は経済関係の本や決算書を読むこと。 Twitter:@shin_yamaguchi_

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