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「ワシの楽しみを取り上げるのか!」免許返納を認めない79歳父親が自家用車を手放した“まさかのワケ”

帰省の目的は免許返納の催促へ

 健介さんの単独事故以来、伊勢崎さんは気が気ではなくなり、タイミングを見計らっては、免許の返納を促したといいます。 「単独事故ならともかく、他人に危害などを加えたら大問題ですよ。それからというもの、嫌われることを覚悟で、免許の返納を口酸っぱく言ってきたのですが、本人は聞く耳を持たないどころか『おまえはワシの楽しみを取り上げるのか!』と、逆ギレされる始末でした」  確かに、路線バスなどない田舎なので、自家用車がないと不便のようですが、それでも伊勢崎さんの不安は募る一方だったといいます。 「タクシーを利用するようにも言ったのですが、それも却下され、妻にも相談して、東京で同居することも考えました。でも、昔から頑固な父親は一向に首を縦に振ろうとはしませんでした

「ワシ、免許返納するわ」

高齢者 運転

※画像はイメージです

 そんなある日、健介さんから「ワシな、来週免許の返納に行ってくるわ。これでオマエも安心だろ」と電話があったそうです。 「あれだけ固辞していた免許の返納だったので、一瞬冗談かと思いましたが、本当でした。とりあえず、依然として半信半疑だったので、その週末帰省しました。そしたら、ガレージに真っ赤な見たこともない車が停まっていたんです。状況が理解できなかった私は、そのまま家の中に入りましたが、なんと父親より一回りは若そうな女性が座っていて、私にあいさつをしてくれました。その光景を見て、なんとなく免許返納の背景が分かった気がしました」  どうやら、健介さんは、その女性と少し前に趣味で始めた絵画教室で出会ったらしく、健介さんの自宅によく遊びに来ているそうです。 「父親は、『その女性に免許の返納を促された』と言っていました。息子の言うことには少しも耳を貸さなかったのに、困ったものです。でも、母親が亡くなってから元気がなかった父親のことを思うと、その女性には感謝しかありませんね。私の帰省も減るかもしれませんし、とにかく良かったです」  その後、伊勢崎さんの読み通り、健介さんの「様子見帰省」は激減し、今では3カ月に一度になったのだとか。 <TEXT/ベルクちゃん>
愛犬ベルクちゃんと暮らすアラサー派遣社員兼業ライターです。趣味は絵を描くことと、愛犬と行く温泉旅行。将来の夢はペットホテル経営
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