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「飛行機代をタダにしろ!」自分でコーヒーをこぼしたのに“CAのせいにする”迷惑老人客の実態

「CAにコーヒーをこぼされた」というまさかのクレーム…

 その日は地方ステイだったため、ホテル到着後にパーサーの部屋に集まって皆でミーティングをする運びとなったのだが、事態はとんでもない方向に展開していた。  なんと、夫婦は地上職員に「フライト中、CAにコーヒーをこぼされた。シミ抜きはしてくれたが、クリーニング代も払ってもらえず、納得できない。二人分の飛行機代をタダにしろ。いう通りにしないと、二度とお前の会社の飛行機には乗らない」とクレームを入れてきたのだ。  夫婦にドリンクサービスをした筆者は、パーサーから「あなたは本当にコーヒーをこぼしてないのね?」「ウソをついてないわよね?」とまるで刑事ドラマの被疑者のごとく詰問された。  パーサーも事細かにフライト報告書に記載しなければいけないことに加え、フライト後の疲れもあって攻撃的な口調だ。  筆者は「お客さまがみずからコーヒーをこぼし、CAコールで呼びだされ、ヤケドの有無を確認後、ジャケットのシミ抜きをした。嘘偽りはない」旨を念押しして、何とかその場は収まった。時刻は午前0時を過ぎていた。

「ごね得」の旨味を知っていた可能性も…

 翌朝、パーサーからはCA側に非がない事実を伝え、あとは上層部が乗客と掛け合ってくれたようだ。「ようだ」と言うのは、その後、上層部からは筆者に対してなんの連絡もなかったからである。  夫妻に納得してもらったか、もしくはモンスター客の怒りを鎮めるためにフライト代を無料にしたか、ことの顛末はわからずじまいだ。  理不尽な思いはぬぐえないが、新人CAだった筆者は会社側に質問することすらできなかった。このような悪質な乗客も一定数存在すると思うことで、「勉強になった」と無理やり自分を納得させた。  疑問なのは、妻の口から「クリーニングクーポン」という単語が出てきたこと。もしかしたら以前、飲み物事故に遭ってクーポンを発行してもらったのかもしれない。その知恵が「ごね得」の旨味を知り、あり得ない事態に発展した可能性もあるだろう。  近年、このような迷惑客が急増している。「こちらは金を払っているお客さまだ」という上から目線の思考が、横暴になったり、事実を捻じ曲げたり、必要以上の謝罪を求めたりなどの行為に走らせているのだろうか。  また、「弱者」への迷惑行為で、日ごろ溜まった鬱憤やストレスを解消している場合もゼロではないだろう。いずれにしても、嘆かわしい世の中になってきている。  サービスする側、される側――両者が気持ちよく暮らす日常が来ることを願いたい。  文/蒼井凜花
元CAの作家。日系CA、オスカープロモーション所属のモデル、六本木のクラブママを経て、2010年に作家デビュー。TVやラジオ、YouTubeでも活動中。
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