更新日:2024年08月20日 15:05
ライフ

「24時間、真っ暗な部屋から出られない」“眼球使用困難症”を患った50歳男性の告白。公的支援も受けられない

マイノリティな病気であることの辛さ

矢野さん

まだ外出することができた2023年頃に撮影された写真

「自分の病気はマイノリティ・オブ・マイノリティ。共感してくれる人、苦しみを共有して励まし合える人が本当にいないんです」と、矢野さんは続ける。 「つい先日、YouTubeにコメントをくれた方が、どうやら似たような目の病を抱えていることがわかったんです。こういうとき不便だよね、つらいよね、という実感を共有できたとき、ふるえるほど嬉しかったですね」
矢野さん

こちらは2022年に撮影された矢野さん宅の写真。現在はカーテン越しに漏れる外光も完全に遮断した部屋で生活している

 光が完全に遮断された、真っ暗な部屋で24時間。外には一歩も出られない。入浴も、光刺激がもっとも少ない真夜中の時間帯に、体調を見ながら妻の介助を得て入っているという状態だという。 「新型コロナが流行していたとき、ホテルで一週間隔離されてつらかった、というエピソードをよく耳にしました。ご本人は、たしかにつらかったのでしょう。でも僕は、『ネトフリ観られるんでしょ? スマホ触れるんでしょ?』と思ってしまいましたね。目がちゃんと使えて同じ状況になれるなら、5年隔離されてもいいくらいです」  また、「先天的に目が見えないのか、後天的に目が使えなくなったのかの違いも大きい」と矢野さんは話す。 「そこにはまた、違った苦悩があると思います。しかも僕の場合は、症状が出だしてからまだ7年ほどですし、40歳を過ぎてからの発症だったので、健常者より耳や触覚が発達しているとか、そういうことはないです。いきなり真っ暗闇の中に放り込まれた、という印象が今も拭えないですね」

病気を知ってもらうことの取り組み

矢野さん

病気の実体験については、noteでも発信を行っている

 矢野さんは現在、YouTubeやnoteなどで、病状の変化や日々思うことをありのままに発信し、「この病気を知ってもらうこと」を目指した活動を行っている。  YouTubeチャンネル「やのひろば」では、「まずは病気のことを知ってもらうこと」を主眼とし、病状の変化を伝える動画を投稿。日々の生活のなか感じたことなど、何気ない近況が、夫婦の温かい空気感、息の合ったテンポで語られている。  また、病気についての発信だけでなく、矢野さんが落語を実演している動画も配信しているようだ。 「実は、笑点の新レギュラーになった落語家・立川晴の輔さんと旧縁があって、落語を教えてもらったんです。聴くだけでなく、実際にやるのはとても楽しく励みになるのですが、いかんせん台本を見ることができません。落語家の実演を聴いて覚えるしかないので、本当にちょっとずつしか覚えられないんですね。ひとつの落語を通しでできるようになるまで、30日はかかってしまいます」  なお、現在は病状が芳しくなく、落語の実演はなかなか再開できずにいるとのこと。
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SNSが「命を繋ぐ生命線」
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フリーライター。神戸・大阪の編プロに8年勤務し、グルメ・街ネタ誌や飲食業界誌などを手がける。取材経験は1500件以上。某純文学新人賞の最終選考に3度残ったことがある。現在はWEBサイト「LIQLOG」などで、ビギナーにやさしいお酒の基礎知識や取材記事を執筆中
X(旧Twitter):@kawase_syota

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